「松坂大輔投手の現役引退発表」で思い出したいくつかのこと

本日、埼玉西武ライオンズの松坂大輔投手が今季限りで現役を引退することを発表しました[1]。

松坂投手が高校時代から顕著な活躍を示すとともに、1998年にライオンズに入団し、プロ入り1年目となる1999年から3年連続での最多勝や2001年の沢村賞獲得など、日本を代表する投手として活躍したことは周知の通りです。

また、6年間で総額5200万ドルの年俸契約を結んだボストン・レッドソックスに入団し2007年から2014年までの8年にわたり大リーグに在籍したことは、日本人選手が大リーグに挑戦することが日常的な光景となった21世紀にあっても、ひときわ印象的なものでした。

独占交渉権と年俸契約を合わせて1億ドルを超える金額が松坂投手に投じられた点に注目し、大リーグにおける年俸の持つ意味や日米における年俸の位置付けの相違、あるいは「有望な若手選手と長期契約を結び相対的な年俸の上昇を抑制する」という球団経営上の戦略を分析したのが、小著『メジャーリーグに日本人選手が溢れる本当の理由』の第4章でした。

ところで、私が松坂投手のお話を直接聞くことが出来たのは、2008年7月のことです。

7月3日から7月6日までヤンキー・スタジアムで行われたニューヨーク・ヤンキースとの4連戦のうち最初の3試合を調査した際、クラブハウスで面会し、しばしお時間を割いていくつかの質問に答えていただいたものでした。

この時に伺ったお話のいくつかは2008年に刊行した小著『メジャーリーガーが使いきれないほどの給料をもらえるのはなぜか?』(アスペクト 2008年)や、その他の論考を執筆する際に大いに役立ちました。

その一方で、2009年以降は故障に見舞われて1年を通して活躍することが難しくなり、レッドソックスからクリーブランド・インディアンズとのマイナー契約を経てニューヨーク・メッツに移籍し、2014年12月に福岡ソフトバンクホークスに入団して日本球界に復帰したものの、往年の活躍を再現することが出来ず中日ドラゴンズからライオンズと球団を変えたことは、広く知られるところです。

この間の松坂投手の出処進退のあり方については種々の議論があろうものの、一軍の試合に出場しないことそのものが人々の注目を集めたことは、松坂投手の話題性の高さと、周囲の期待の度合いの高さを示唆していたと言えるでしょう。

2006年と2009年のワールド・ベースボール・クラシックで最優秀選手となり、2008年には日本人大リーグ選手として歴代最多の18勝を記録するなど、大舞台での勝負強さを含め、一時代を画した松坂投手は間違いなく日本の野球史に燦然と輝く存在です。

それだけに、現役を退いた後の松坂投手がどのような形で球界に関わるのか、今後の動向が注目されます。

[1]プロ野球 西武 松坂大輔 今季かぎりで現役引退を発表. NHK NEWS, 2021年7月7日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210707/k10013123621000.html (2021年7月7日閲覧).

<Executive Summary>
Miscellaneous Memories of Mr. Daisuke Matsuzaka (Yusuke Suzumura)

The Saitama Seibu Lions announces that Mr. Daisuke Matsuzaka will retire at the endo of 2021 season on 7th July 2021. In this occasion I remember miscellaneous memories of Mr. Matsuzaka.

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