菅義偉首相は施政方針演説で披露した「梶山静六の教え」を実践できるか

昨日、通常国会が召集され、菅義偉首相が衆参両院において施政方針演説を行いました[1]。

演説の冒頭で「国民の命と健康を守り抜く。まずは「安心」を取り戻すため、世界で猛威をふるい、我が国でも深刻な状況にある新型コロナウィルス感染症を一日も早く収束させます。」としたことは、新型コロナウイルス感染症の拡大が続く現状に鑑みれば、適切な対応であったと言えるでしょう。

その一方で、「新型コロナウイルス感染症を一日も早く収束させ」るための方策として、「テレワークの七割実施、不要不急の外出・移動の自粛、特に、二十時以降の不要不急の外出自粛、さらに、イベントの人数制限」や「新型インフルエンザ特別措置法を改正し、罰則や支援に関して規定」するといった事項が挙げられているものの、前者については従来の対策と同じであり、後者については具体的な内容が不明であるため、どの程度まで実効性があるかは不明です。

あるいは、従来の施策が奏功しなかったのは対策が不十分であったのか、その他の要因があったのかが不明なだけに、これまでの対応の検証の視点を欠く点は物足りないと言えるでしょう。

また、その他の政策については各省の宣伝に終始する、過度に細かく迫力不足を否めないものであることは、菅首相の政権運営への意欲の強さを疑わせます。

何より、「携帯電話料金については、大手が相次いで、従来の半額以下となる大容量プランを発表し」たことを「身近な情報通信の利用環境を、国民目線に立って変えてい」くとするのは、政権による誘導の結果であるとしても民間企業の努力の成果を掠め取るかのようであり、寒心に堪えません。

菅首相は、演説を終えるにあたり、政治上の師とする梶山静六氏から贈られたという以下のような言葉を紹介しました。

一つは、今後は右肩上がりの高度経済成長時代と違って、少子高齢化と人口減少が進み、経済はデフレとなる。お前はそういう大変な時代に政治家になった。その中で国民に負担をお願いする政策も必要になる。その必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない。
もう一つは、日本は、戦後の荒廃から国民の努力と政策でここまで経済発展を遂げてきた。しかし、資源の乏しい日本にとって、これからがまさに正念場となる。国民の食い扶持をつくっていくのがお前の仕事だ。

「国民への説明」や「国民の食い扶持をつくる」といった点は菅首相だけでなく国政に与るものにとって当然の事柄だけに、菅首相には言葉を飾らず、「師の教え」を実践することが求められるのです。

[1]第二百四回国会における菅内閣総理大臣施政方針演説. 首相官邸, 2021年1月18日, https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0118shoshinhyomei.html (2021年1月19日閲覧).

<Executive Summary>
Will Prime Minister Yoshihide Suga Be Able to Realise Mr. Seiroku Kajiyama's Lessons? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Yoshihide Suga made the Policy Speech at the both Diets on 18th January 2021. It might be remarkable for Prime Minister Suga to realise two lessons by Former Chief Cabinet Secretary Seiroku Kajiyama, a teacher of Mr. Suga

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