「第49回衆議院議員総選挙の勝者」はどの政党か

昨日、第49回衆議院議員総選挙の投開票が行われました。

その結果、自民党は公示前の276議席から15議席減らしたものの、常任委員会の委員長職を独占するとともに、委員会で過半数の委員を確保出来る「絶対安定多数」となる261議席を確保する一方で、野党第一党の立憲民主党は選挙前を13議席下回る96議席に留まりました。また、日本維新の会は改選前の11議席から30議席増やし、公明党を抜いて第三党となりました[1]。

公示前の時点で衆議院に議席を持っていた各党の獲得議席数を含む開票結果は表1の通りです。

表1 第49回衆議院議員総選挙の開票結果

20211101表1_第49回衆議院議員総選挙の開票結果_01

自民党の岸田文雄総裁にとって、石原伸晃元幹事長や野田毅元自治大臣などの「大物議員」の落選や甘利明幹事長や若宮健嗣国務相の小選挙区での敗北は確かに痛手です。

特に甘利氏が自民党の現職の幹事長として初めて小選挙区で落選したことが進退問題に発展するなど[2]、従来の党内の権力構造を刷新して「岸田体制」を確立するためには、むしろ好機であると考えられます。

立憲民主党については、「『野党共闘』だから勝てた議員」と「『野党共闘』でなくても勝てた議員」との間で、あるいは保守的な議員と進歩的な議員との間での路線対立が起きる可能性があるだけに、現在の「枝野幸男代表-福山哲郎幹事長」の体制のあり方が大きな問題となることでしょう。

何より、旧民主党は勢力が拡大する局面では権力闘争や路線対立が覆い隠されるものの、逆境に立たされると相違点が際立ち、分裂を繰り返して党勢を縮小させてきただけに、どれだけ党の一体感を保てるかが重要になります。

これに対し、日本維新の会は小選挙区の候補者を擁立した14の選挙区の全てで当選を果たすなど、地盤である大阪府内で他党を寄せ付けない強さを発揮しました。

日本維新の会の躍進の背景には、独力で政権を獲得する意欲がなく、意欲がないために極端ともいえる主張を行い、極端ともいえる主張のために力強さがあり、力強さがあるために人々の支持を得る、という構造のあることが推察されます。

その一方で、比例区を含め近畿ブロックに比べて他の地区の議席の獲得は進んでいないことは、日本維新の会が「地域政党」の域を脱し切れていない可能性を示します。

このように、今回の選挙の結果を眺めると、絶対安定多数を維持できた自民党が最も大きな利を占め、公示時点に比べて30議席増の日本維新の会は大阪府以外の選挙区での勢力の拡大が、また100議席を下回った立憲民主党は「野党共闘」を巡る党内の路線対立の回避が課題となることが分かると言えるでしょう。

[1]衆院選 全議席決まる 自民「絶対安定多数」維新は第三党に躍進. NHK NEWS WEB, 2021年11月1日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211101/k10013329991000.html (2021年11月1日閲覧).
[2]甘利氏、小選挙区で敗北. 日本経済新聞, 2021年11月1日朝刊3面.

<Executive Summary>
Which Party Was the Winning of the 49th General Election? (Yusuke Suzumura)

The 49th General Election was held on 31st October 2021 and the Liberal Democratic Party keeps the majority in the Lower House. In this occasion we examine which party was the winner of the Election.

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