「保守分裂」となった秋田県知事選挙が菅義偉首相にいかなる影響を与えるか

昨日投開票が行われた秋田県知事選挙では、現職の佐竹敬久候補が元衆議院議員の村岡敏英候補ら3名を破り、4回目の当選を果たしました。

4候補の得票数は、以下の通りでした[1]。

佐竹敬久(無所属・現職):23万3305票
村岡敏英(無所属・新人):19万3538票
相場未来子(無所属・新人):2万3679票
山本久博(無所属・新人):2万617票
(以上、敬称略)

今回の秋田知事選挙は、自民党秋田県連が佐竹候補を支持したものの、自民党の県議の一部が村岡氏を支援しました。

そのため、自民党への支持が強いいわゆる「保守王国」である秋田県において、自民党が二手に分かれて争う保守分裂選挙となりました。

菅義偉首相の出身地であり、演説などでもしばしば言及する秋田県で保守分裂が起きたということは、興味深い現象と言えるでしょう。

それとともに見逃せないのが、佐竹候補が防衛省による地上配備型迎撃ミサイルシステムであるイージス・アショアの配備に非極的であったこともあり、菅首相が実質的に村岡候補を支援していたという点です。

村岡候補の出馬によって保守分裂が起き、地方政界の中心的な存在である県会議員が佐竹派と村岡派に分かれたことは、「保守王国」の中に確執が生じたことを意味します。

もちろん、保守分裂が起きたものの両候補の得票数の合計は約43万票で、共産党が擁立した相場未来子と独立系の山本久博候補の合計得票数約4万4千票の10倍近い票を獲得しており、秋田県における自民党への支持の厚さに変わりはありません。

しかし、村岡候補の敗戦は、首相の意向を気に留めない地方議会の議員が多数いることや地方政界における菅首相の存在の浸透度に濃淡があることを示唆します。

さらに、今年10月に衆議院議員が任期満了を迎え、必ず総選挙が実施されるという現状では、菅首相の下で挙党態勢を維持するのが難しくなりかねません。

その意味で、昨日の秋田知事選挙は、与野党の対立としての「選挙の顔」ではなく、党の求心力の要としての「党の顔」を担えるか、菅首相の力量に懸念を抱かせる結果になったと言えるでしょう。

[1]秋田県知事選挙開票結果最終. 秋田県選挙管理委員会, 2021年4月4日, https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000056077_00/%EF%BC%91kaihyou0000.xlsx (2021年4月5日閲覧).

<Executive Summary>
What Is a Meaning of the 2021 Akita Governor Election for Prime Minister Yoshihide Suga? (Yusuke Suzumura)

The 2021 Akita Governor Election was conducted on 4th April 2021 and Mr. Norihisa Satake was elected. It seems not acceptable result for Prime Minister Yoshihide Suga, since he supported Mr. Toshihide Muraoka who was defeated by Mr. Satake.

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