宝塚歌劇団月組の「退団セレモニー」について思ったいくつかのこと

去る8月15日(日)、東京宝塚劇場で行われた宝塚歌劇団月組公演『桜嵐記』、ショー"Dream Chaser"、そして退団者の記念の式典の実況配信を鑑賞するとともに、その際の寸評は昨日の本来でご紹介した通りです[1]。

そこで、今回は私にとって初めて接した、退団者を慰労する記念の式典の様子について思ったことを振り返ります。

今回は珠城りょうと美園さくらという男女のトップスターを加えた9名が退団するとともに、2名が専科に異動しました。

退団者の手紙を組長の光月るうが読み上げ、花束を贈呈するだけでなく、全員が最後に挨拶を行ったことは、トップスターは当然ながら一人ひとりの出演者が舞台上では様々な役柄を担当し、日々の稽古や各種の活動でもそれぞれの役割を果たすからこそ月組が成り立っているということを誰もが十分に理解しているからこその対応であったと感じられました。

もしそうではなく、これまでの習慣や他の組を模倣した措置で、全て台本に書かれた内容をそのまま読み上げるだけなら、たとえ演技に巧みな人たちが集まる宝塚歌劇団であるとしても、劇場や画面越しに人々の共感を得ることは難しかったでしょう。

また、印象的であったのは閉幕の案内後に幕が上げられて再度9名が登場し、最後に一言ずつ挨拶を行った際の様子です。

それまでとは打って変わって時に左右を眺め、時に言いよどみながらも宝塚歌劇団と月組で活動できたことや観客の応援を受けてこられたことへの謝意を述べる姿は、台本を離れ、一人ひとりが思うところを率直に伝えたことが分かりました。

もちろん、閉幕前の整然とした挨拶を公式的なものとすれば、閉幕後の挨拶は顔の見える最後の言葉であったと言えるでしょう。

そして、このような場面こそが、演者の活き活きとした姿を観客に伝え、舞台上の人たちの魅力をよりよく教えるために力を持っていると感じたものです。

確かに、宝塚歌劇団の活動に強い関心を持ち、贔屓の演者や組がある人にとっては、こうした式典は一つの節目として不可欠なものでしょう。

しかし、そうではない鑑賞者にとっても、こうした場面を目の当たりにすることは、公演を離れ、ある意味で素顔に近い演者の姿を知る機会が得られることになります。

その意味でも、実況配信がミュージカルとショーだけでなく、最後まで行われたことの意義は大きいと感じた次第です。

[1]鈴村裕輔, 宝塚歌劇団月組公演『桜嵐記』. 2021年8月16日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/17095b67f89966189eec1b53fa65d730?frame_id=435622 (2021年8月17日閲覧).

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of the Farewell Ceremony of the Tsuki Gumi of the Takarazuka Revue 2021 (Yusuke Suzumura) (Yusuke Suzumura)

The Tsuki Gumi of The Takarazuka Revue held a performance Oranki, staring by Tamaki Ryo, at the Tokyo Takarazuka Theatre on 15th August 2021. In this occasion I express miscellaneous impressions of the Third Part of the performance, the Farewell Ceremony.

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