「藤井五冠の誕生」について思ったいくつかのこと

去る2月11日(金、祝)と12日(土)、将棋の第71期王将戦七番勝負の第4局が行われ、挑戦者の藤井聡太四冠が渡辺明王将を破り、王将を獲得しました。

藤井四冠は、これまで獲得した竜王、王位、叡王、棋聖に王将を加え、史上最年少となる19歳6カ月での五冠を実現しました。

これまで五冠を達成したのは大山康晴十五世名人、中原誠名誉王座、羽生善治九段といずれも一時代を築いた大棋士だけに、藤井聡太九段が五冠を実現したことで将棋界は「藤井時代」を迎え、1996年に七冠を独占した羽生九段に続き、八冠を全て手にすることが期待されるのも当然と言えるでしょう[1]。

専門の棋士になれるのはごく一部ではあっても、早い場合では幼児の段階から親しみ、高齢者も楽しむことのできるという意味で、将棋の裾野は広いものです。

その様な裾野の広さに加え、将棋に親しみのない人々も注目してきた藤井九段が史上最年少で五冠を達成したことで、「八冠をいつ達成するか」あるいは「誰が八冠を阻止するか」といった点に注目が集まり、将棋界への人々の関心が一層高まることが推察されます。

それとともに、今回の「藤井五冠誕生」に関する報道の中で印象的であったのは、加藤一二三九段の談話で藤井五冠の指す将棋を「心躍る芸術的な将棋」[2]と表現したことです。

気風や指し手の持ち味については様々な表現があろうものの、藤井五冠の将棋に「芸術的」ではなく「心躍る芸術的」という修飾を与えたことは、それだけ加藤九段も藤井五冠の将棋に感銘を受けたことを示唆します。

これに加えて、加藤九段自身も「神武以来の天才」と評され、日本の将棋史に残る偉大な棋士だけに、これからの将棋界を担う偉才である藤井五冠の持ち味を「心躍る芸術的な将棋」と評することが出来たのであろうと思われます。

まさに偉才は偉才を知るというべき、加藤一二三九段による藤井聡太五冠への祝福の言葉でした。

[1]「藤井時代」比類なき強さ. 日本経済新聞, 2022年2月13日朝刊2面.

[2]加藤一二三@音声サービスNow Voice一日一話更新中. "藤井聡太さん 史上初10代五冠👑の前人未到の偉業達成 おめでとう御座います㊗️ 最大の賛辞を送ります💐 謙虚な御人柄で、ひたむきに将棋盤に向き合い、たゆまぬ努力を重ねられた先の栄誉と感動しております。今後も新しい景色を目指すと共に、心躍る芸術的な将棋でいつまでも我々を魅了してください。". 2022年2月12日18時44分, https://twitter.com/hifumikato/status/1492434303305019392 (2022年2月13日閲覧).

<Executive Summary>

Miscellaneous Impressions of Mr. Sota Fujii as the Youngest Player to Win Five Major Titles (Yusuke Suzumura)

Mr. Sota Fujii, who has Four Major Titles of the Professional Shogi, became the youngest player to win Five Major Titles after defeating Mr. Akira Watanabe and obtaining the Osho Title on 12th February 2022. In this occasion I express miscellaneous impressions of this historical event.

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