「立憲民主党の代表選挙」で4人の候補者に求められるのは何か

11月19日(金)に告示された立憲民主党の代表選挙は、11月30日(火)に投開票を迎えます。

立候補した4人、すなわち逢坂誠二氏、小川淳也氏、泉健太氏、西村智奈美氏はテレビ番組への出演や全国各地での遊説を行うなど、精力的な選挙活動をしています。

確かに、創設者であり国民的な知名度も高い枝野幸男代表の後任となるには知名度や存在感に乏しい4氏だけに、積極的な選挙活動は自らの主義や主張を代表選の有権者だけでなく広く国民に知らしめるためにも重要な機会となります。

それとともに、10月31日(日)に投開票が行われた第49回衆議院議員総選挙で公示前勢力を下回る事実上の敗北を喫した立憲民主党にとって、野党第一党にもかかわらず注目の度合いが高まらない中で、代表選を通して党の存在が広く知られることは大きな意味を持ちます。

従って、今回の代表選は立憲民主党にとって格好の宣伝の機会という性格を備えています。

その一方で、4人の候補者の主張を見る限りでは、果たして代表となった後に独力で衆議院の過半数を制して政権を獲得する意志と戦略があるのか心もとなく思われるのも事実です。

党内外の多様な意見を尊重するのは旧民主党以来続く立憲民主党の美風ではあるものの、同時に党の方針が決定した後も種々の意見が示されて一致した行動をとれない場面が散見されるのは弊風と言えます。

その様な状況をいかに改めるかを具体的に提起することは党風の刷新にも繋がる重要な点ながら、具体的な話題とならないことは、各候補者の遠慮ないし状況の理解の不確かさを推察させます。


あるいは、現在の国政においては保守勢力の一層の保守化と革新勢力のさらなる革新化が進むだけに、本格的な中道勢力の登場は政界の活性化だけでなく有権者の政治に対する関心をより高めるためにも不可欠です。

党内に保守勢力と革新勢力を抱える立憲民主党の性格からすれば、中道勢力として議論の幅を広げることは党勢の回復の面でも重要な対策となります。

それにもかかわらず、今回の代表選挙では共産党との協力を含む「野党共闘」の継続の有無や日本維新の会との連携の可否といった現在の中央政界の枠組みを前提とした議論が行われ、立憲民主党そのもののあり方が問われる機会は多くありません。

こうした状況は、国民の信頼を獲得するには程遠いものであり、国民の信頼を得られなければ政権の獲得だけでなく、今後の選挙で勢力を伸張することも難しくなりかねません。

もとより、代表選挙で実際に投票するのは一人ひとりの国民ではなく、国会議員や各都道府県の代表者、党員、協力党員など、限定されています。従って、各候補者もこうした代表選の有権者の注意と関心を集める話題を積極的に取り上げようとするの当然かもしれません。

しかし、代表選の後には来夏の参議院選が控えており、政局の動向によっては総選挙もいつ行われるか分かりません。

それだけに、候補者がそれぞれ党の政策や運営の方針、あるいは目指すべき社会や国家の像を明確に示し、各点について真摯な議論が行われていないということは、人々の注目と関心が集まる代表選という機会が適切に活用されていないことを示します。

われわれが今回の立憲民主党の代表選挙を残念に思うのも、まさにこうした点を理由とするのです。

<Executive Summary>
Can the Candidates for the Presidential Election of the Constitutional Democratic Party Japan Apply an Opportunity to Show Their Policy?
(Yusuke Suzumura)

The Presidential Election of the Constitutional Democratic Party of Japan will be held on 30th November 2021. In this occasion we examine a possibility for them to apply this opportunity to expand the party power and show their own policy.

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