『クラシックの迷宮』の特集「指揮者・小澤征爾をしのんで」の的確な評言と音源が描き出す小澤征爾さんの魅力
本日NHK FMで放送された『クラシックの迷宮』は今年2月6日(火)に逝去した指揮者の小澤征爾さんを追悼する特集「指揮者・小澤征爾をしのんで」が放送されました。
当初の予定を急遽変更しての放送であり、逝去が発表されてから追悼特集が組まれるまでの期間が番組の歴史の中で最短であったことは、それだけ小澤征爾さんが音楽界に残した功績の大きさを物語ります。
また、司会の片山杜秀先生による以下のような小澤征爾さんへの評価は、一聴に値するものでした。
この人しかいない、一世一代の個性の爆発によって日本の音楽界、世界の音楽界に欠かせない存在となった
1962年のNHK交響楽団との短い蜜月の時代の頂点となる演奏がメシアンのトゥーランガリラ交響曲
『NHK交響楽団50年史』の言葉を借りれば小澤征爾さんとNHK交響楽団の関係は『意思の疎通を欠く』ものであった
こうした評価を踏まえて紹介されたのは、1962年にNHK交響楽団と収録したメシアンのトゥーランガリラ交響曲と小澤征爾さんの指揮法の師である齋藤秀雄の没後10年を記念した1984年の桐朋学園齋藤秀雄メモリアル管弦楽団によるバッハの『シャコンヌ』でした。
イヴォンヌ・ロリオをピアノ、本荘玲子をオンド・マルトノに迎えたトゥーランガリラ交響曲は、作曲者自身が「理想の演奏」として絶賛したことが大いに頷ける演奏で、作品の持つ繊細で幾重にも重ねられた旋律の層を丹念に解きほぐしつつ一つの音楽へと形作る様子が収録から60年以上を経てもありありと蘇る内容でした。
また、バッハは齋藤秀雄の編曲によって壮麗な雰囲気を濃厚にまとう作品となったにもかかわらず、時折見せる軽やかな表情の中に大編成の作品だけでなく室内楽の演奏でも群を抜く手腕を発揮した小澤征爾さんの音楽作りの確かさが改めて確認されました。
上掲の評言の中に、間接的とはいえいわゆる「N響事件」を取り上げたことを含め、その活躍の幅の広さを可能な限り的確に伝えようとした、いつにも増して意義深く聞き応えのある、今回の『クラシックの迷宮』でした。
<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Expresses Sincere Condolences to Dr Seiji Ozawa (Yusuke Suzumura)
A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcast via NHK FM featured Dr Seiji Ozawa to commemorate his death on 17th February 2024. It might be a meaningful opportunity for us to understand Dr Ozawa's great contribution to the development of "classical music."