岸田内閣に求められる「骨太の方針」ではなくなすべき政策を遂行する力

昨日、政府は経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」を閣議決定しました。

岸田文雄首相の標榜する「新しい資本主義」の実行計画が閣議決定されたことを受け、「骨太の方針」にも「人への投資」に3年間で4000億円を投資するなど、関連する施策が反映されています[1]。

その一方で、今回の「骨太の方針」を見ると、最低賃金の引上げ、貯蓄から投資への移行の推進、カーボンニュートラル実現など、これまでの「骨太の方針」で繰り返し取り上げられてきた項目が並び、新味があるといえば「国民皆歯科健診の推進」という程度です[2]。

「国民皆歯科健診の推進」を除けばいずれも現在の日本が抱える懸案事項に他ならず、「骨太の方針」といった言葉とともに特筆大書すべき事柄というよりは、日々の政策の中で着実に遂行することが求められ課題です。

もちろん、財政規律の維持にこだわりを見せたこと[3]は、『均衡財政』(実業之日本社、1952年)を著して経済の安定的な発展による真の均衡財政を唱えた池田勇人に始まる宏池会に深い愛着を示す岸田首相らしいと言えるでしょう。

しかし、「新しい資本主義」が依然として人口に膾炙しない中で旧態依然とした方針を掲げることは、「『骨太の方針』の『骨太』とは何か」という根本的な問いを改めてわれわれに投げかけます。

その意味で、今や岸田内閣に求められるのは「骨太の方針」と大言壮語することなく、なすべきことを確実に遂行する力であると言えるでしょう。

[1]人への投資 世界水準遠く. 日本経済新聞, 2022年6月8日朝刊1面.
[2]骨太の方針要旨. 日本経済新聞, 2022年6月8日朝刊7面.
[3]首相、「財政規律」こだわる. 日本経済新聞, 2022年6月8日朝刊4面.

<Executive Summary>
Is It the "Grand Design"?: A Question of a Basic Policy for the Kishida Cabinet's "New Form of Capitalism" (Yusuke Suzumura)

The Kishida Cabinet decides a Basic Policy for the "New Form of Capitalism" on 7th June 2022. In this occasion we examine a meaning of such kind of policy.

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