「開幕50日前」に考える東京オリンピックとIOCを取り巻く状況と課題

去る6月3日(木)、7月23日(金、祝)に開幕式が行われる予定の東京オリンピックまで50日となりました。

現時点で東京オリンピック及びパラリンピックの開催を巡り、日本国内の世論は賛否が分かれ、外国の報道機関の中にも開催に反対する声が認められます。

これに対し、開催権の可否を決定する国際オリンピック委員会(IOC)にとってはオリンピックは唯一の競争力のある商品であり、オリンピックの開催を前提に放映権の販売や協賛金の募集を行っています。

東京大会を中止すれば、開催関連の費用は保険で補填されるとしても、今後新たに保険契約を結ぶ際には保険金の高騰は不可避となります。また、中止という選択肢が入ることで大会を確実に開催できないという可能性が高まり、現行の放映権契約を更新する場合に契約額の減少は免れませんし、協賛企業数も低下しかねません。

このとき、IOCの集金の仕組みは破綻しますし、IOCが収入の大半を国際競技連盟に助成することで各団体を金銭面を通して統制するという現在の統治の構造も変更を余儀なくされます。

今年に入ってから日本国内で開催への懐疑的な意見が台頭する一方で、IOC側が一貫して開催以外の選択肢がないことを強調しているのも、現行の仕組みが崩壊することで、1970年代末のようにオリンピックの開催に立候補する都市が存在しなくなるという状況が再来することを避けようというIOCの意図を反映しています。

やがてオリンピックが始まれば、これまでの意見の対立は雲散霧消し、あたかも当然のごとく大会が進むかもしれません。

それだけに、開幕50日の時点で、改めて東京オリンピックを取り巻く状況とIOCが直面する課題を考えることの意義は、決して小さくないと言えるでしょう。

<Executive Summary>
Reviewing and Prospecting Situations Surrounding the Tokyo Olympics and the IOC (Yusuke Suzumura)

The 3rd June 2021 is the 50 days prior to the Opening Ceremony of the Tokyo Olympic Games which will be held on 23rd July 2021. In this occasion we examine actual situations of the Tokyo Olympics and the International Olympic Committee.

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