米国の球団経営者たちが期待するトランプ再選

去る6月22日(月)、日刊ゲンダイの6月23日号25面に連載「メジャーリーグ通信」の第71回「米国の球団経営者たちが期待するトランプ再選」が掲載されました。

今回は、再選を危ぶむ声も上がるトランプ大統領を大リーグの球団経営者たちが支持する理由を検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

******************
米国の球団経営者たちが期待するトランプ再選
鈴村裕輔

2020年の国際政治の中で最大の関心事の一つは、米国の大統領選挙だ。

国連幹部が「史上最低の大統領」と批判しながら、根強い支持者を繋ぎ止めることに成功しているのが、現職大統領で再選を狙うドナルド・トランプである。

これに対し、民主党の大統領候補となるのが確実なジョー・バイデンは、「経験豊かな中道派」という印象があるものの失言癖が治らず、「トランプに比べればよいかも知れないが」と消極的な評価に止まる。

米国の政治専門ウェブサイト・リアルクリアポリティクスによれば、5月28日から6月16日までの各種の世論調査を平均すると、バイデンの支持率はトランプを8.8ポイント上回っていた。

確かに、社会の分断を煽るかのような言動を繰り返すトランプに対する批判の声は、米国の内外にかかわらず強いものだ。

しかし、バイデンの勢力も伸び悩んでいることは、トランプとの差が全米平均で10ポイント未満であり、決定的な支持となっていないことからも推察される。

そして、ここに、大リーグの球団経営者たちのほぼ4分の3が共和党への献金を行い、「トランプ支持」あるいは「共和党支持」の姿勢を崩さない理由が求められる。

何故なら、球団経営者たちの間には、バイデンの今後に懸念を持つからだ。

バイデンは大統領選の伴走者となる副大統領候補に女性を指名することを公言した。

そのため、予備選挙の際に最大の対立候補となったバーニー・サンダースに比べて若者の支持を得られなかったバイデンが、女性であり、若者から人気のある上院議員のエリザベス・ウォーレンを指名する可能性も指摘されてきた。

一方、民主党内では、伝統的な支持層であるアフリカ系や存在感を高めているヒスパニック系の米国人の票を取り込むため「非白人女性を副大統領候補に」という声が高まり、「初の女性黒人大統領を目指す」とされる上院議員のカマラ・ハリスなどが有力視され、後に副大統領候補となった。

だが、ハリスは予備選中、バイデンを最も強硬に非難しており、副大統領候補としてバイデンを支えられるかは不透明だ。


知名度の高いウォーレンを副大統領候補に指名すれば若者の支持を得られたかもしれない。しかし、「富裕層への課税強化」、「徹底した大企業の規制」といったウォーレンの主張はバイデンの政策から中道色を薄め、革新寄りにする。

そのような民主党候補が政権を獲得すれば、球団経営者たちの本業も様々な制約を受けることになる。

こうしたことから、経営者たちは国内外の評判は高くないとはいえ大企業への規制には消極的な姿勢を示しているトランプや共和党の政権が続くことこそが望ましく、献金を続けてきた共和党の大統領候補であるトランプの再選に期待をかけているのである。
******************

[1]鈴村裕輔, 米国の球団経営者たちが期待するトランプ再選. 日刊ゲンダイ, 2020年6月23日号25面.

<Executive Summary>
Why Do MLB Owners want Reelection of President Trump? (Yusuke Suzumura)

My article titled "Why Do MLB Owners want Reelection of President Trump?" was run at The Nikkan Gendai on 23rd June 2020. Today I introduce the article to the readers of this weblog.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?