布マスクの到着で思った「アベノマスク」にまつわるいくつかのこと

昨日、わが家に厚生労働省医政局経済課マスク等物資対策班を差出人とする布マスク2枚が到着しました。

今年4月1日(水)に安倍晋三首相が全世帯に布マスクを配布することを表明すると、一部で「アベノマスク」という呼び名が与えられ、政策を冷やかす声が起きたこと[1]は周知の通りです。

また、配布の表明がなされたものの、現時点で全世帯への配布が完了していないこと、4月当時に比べ現在ではマスクの入手が容易になっていることなどから、菅義偉官房長官が布マスクの利用方法は各家庭の自由であるとともに、感染が再び拡大することも念頭に活用してほしいという意向を示したこと[2]などは、今回の取り組みが必ずしも適時的な政策とはなっていないことを示唆します。

その一方で、布マスクに同封されていた案内には、以下のような呼び掛けが記されていました[3]。

みなさまへ
みなさまには、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた取組にご協力いただいていることに、感謝申し上げます。
感染拡大を防ぐため、これまでどおり、「3つの密(密閉、密集、密接)」を避けていただくとともに、「新しい生活様式」を実践いただくようお願いします。その際、自分は感染者かもしれないという意識をもっていただき、症状がない人でもマスクの着用をお願いします。
この度、一住所あたり2枚の布マスクを配布します。十分な量でないことは承知しておりますが、使い捨てではなく、洗剤を使って洗うことで、再利用可能ですので、ご活用ください。

差出人の名前は記載されているものの呼び掛けの主体が誰であるか不明瞭であるという難点はあるものの、「十分な量でないことは承知しておりますが」とおよそ政府の他の文書とは異なる弱気とも辞を低くしたともいえる表現が用いられていることなどは、大変に印象的です。

今後、布マスクをどのように利用するかはわれわれ一人ひとりが自らの判断に従って決めるべきことながら、こうした記載がなされていることは、先行きが不透明な状況の中で最善の結果を得ようとする関係者の努力の痕跡を示しているかのようです。

それとともに、このような表現そのもの体が新型コロナウイルス感染症に関する資料の収集と保全という観点から興味深いものだと思われるところではあります。

[1]布マスク正しく使って. 日本経済新聞, 2020年4月11日夕刊9面.
[2]布マスク配布 37%どまり. 読売新聞, 2020年6月2日朝刊2面.
[3]みなさまへ. 厚生労働省, 年月日不詳.

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of 'Abenomask' and a Message on a Wrapping Bag (Yusuke Suzumura)

Two cloth masks were delivered from the Ministry of Health, Labour and Welfare on 3rd June 2020. In this occasion I express miscellaneous impressions of these masks and a massage on a wrapping bag.

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