「緊急事態宣言の延長と拡大」に際して当局に感染症対策のさらなる工夫を求める

昨日、政府は5月11日(火)に期限を迎える新型コロナウイルス感染症にかかる緊急事態宣言を5月31日(月)まで延長するとともに、発令中の東京都、大阪府、京都府、兵庫県に加え、愛知県と福岡県も対象とすることを決めました[1]。

今回の延長に伴い、百貨店など大型商業施設への休業要請を中止して20時までの営業を容認する一方、飲食店に対する酒類の提供の見合わせなどは継続して行われることになりました[1]。

ところで、新型コロナウイルス感染症が未知の感染症であった2020年初頭に比べ、1年後の現在では様々な知見が蓄積され、一定の有効性が確認されているワクチンの接種も始まっているのは周知の通りです。

これまでの知見に基づけば、検査を集中的に行うとともに罹患者の隔離を徹底することで感染の拡大が抑制されることが見込まれ、飲食店や娯楽施設などの営業時間の短縮や休業の要請のみに依存する必要はないと推察されます。

それにもかかわらず、現時点で政府や地方自治体が集中検査と大規模な隔離を計画している形跡は認められません。

同様に、各事業者や店舗の感染症対策の有無を個別に確認して決定する方が効果的で効率的な抑止策になるにもかかわらず、当局は小売店や飲食店、娯楽施設などに休業の要請を熱心に行うだけでその他の策を講じないのが実情です。

もちろん、感染症対策の個別の確認を行うためには国や地方自治体が相応の人員と費用を用意する必要があるため、各機関が財政上の余力に乏しい現状では、現実的な施策とは思われないかも知れません。

しかし、点検の費用は税金を原資とするとしても、点検の実務を民間組織に適正な価格で委託すれば、雇用の創出にも繋がり、経済対策の点からも「賢い支出」となることでしょう。

一人ひとりの国民が労苦を強いられつつも様々な工夫を施して「新しい日常」を過ごそうとする一方で、感染症対策を担う各機関の取り組みが旧態依然としたままであることを、われわれは深く憂慮するのです。

[1]鈴村裕輔, 緊急事態 6都府県に拡大. 日本経済新聞, 2021年5月8日朝刊1面.

<Executive Summary>
What Is a Concerned Issue of Authorities' Policy under the State of Emergency? (Yusuke Suzumura)

The Japanese Government decided to extend the term of the State of Emergency for 4 prefectures and add 2 prefectures to the object of the declaration on 7th May 2021. In this occasion we examine a problem of authorities' policy against to prevent the COVID-19.

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