泉健太新代表が「立憲民主党のまとまり」を実現するために何をなすべきか

昨日行われた立憲民主党の代表選挙では、決選投票に進んだ泉健太氏が205ポイント、逢坂誠二氏が128ポイントを獲得し、泉氏が当選しました。

このうち、国会議員票にポイントについては泉氏の得点は、第49回衆議院議員総選挙で共産党と選挙協力したことに批判的であった小川淳也氏の支持者との合計に近く、逢坂氏については党内リベラル派である西村智奈美氏が第1回投票で獲得したポイントとの合計に近い数値でした。

そのため、立憲民主党の中道保守勢力が泉氏を、リベラル勢力が逢坂氏を支持して投票した可能性が推察されます[1]。

当選後に泉氏が挙党体制の確立を強調したのは、今回の代表選挙を通して路線の違いが明確になったことへの懸念の表れと言えるでしょう。

実際、立憲民主党は旧社会党系から保守系まで幅広い立場の議員が集まる寄り合い所帯であるとされ、政策面の食い違いによってまとまりを欠きやすい状況にあることが指摘されています[1]。

確かに、代表選挙での得票からも分かるように、立憲民主党が様々な背景を持つ議員によって成り立っていることは事実ですし、安全保障や原子力発電への賛否などの事項が意見の対立の先鋭化をもたらしているのも疑い得ないところです。

これまでは党の創設者で知名度と党運営の実績の面で群を抜く枝野幸男氏が代表であったため、様々な問題が表面に現れる機会は多くはなかったかも知れません。その一方で、今回の選挙戦を通して党内の対立が明瞭になったことは、今後の党のあり方を考える上で慎重な対応が求められると言えるでしょう。

しかし、幅広い立場の議員が集まるという点では親中派から戦前の大本営参謀までが参加して結成された1955年の自民党も、立憲民主党以上に立場の違いが明らかな政党でした。

大小様々な議員が離党し、新党を結成し、1993年と2009年に下野したとはいえ、現在に至るまで自民党そのものは消滅しないで現在に至っています。

それにもかかわらず立憲民主党が路線の対立が党勢の不振に繋がるとして懸念され、前身である民主党が路線の対立を克服できずに最終的に解党したことはどのように考えればよいのでしょうか。

一つの背景として思い当たるのが政権党であるか否か、あるいは下野した際に政権への復帰を目指したか否かという点です。

前者については、たとえ党のあり方や政権の方針に不平や不満がある議員がいるとしても、政権党である限り人事面での処遇も含めて党内の反発を吸収する方法はより多くなります。これに対し、政権党を離脱することは一時的な存在感の高まりを見せるものの最終的に勢力の縮小や衰亡をもたらしやすいものです。

また、後者については、政権への復帰という明確な目標を掲げることは、求心力を維持するとともに、種々の不満を封じるためににも有効な手段となります。

一方で、民主党は下野時に政権への復帰よりも党内の主導権争いが本格化し、立憲民主党も政権を獲得した経験がないために野党第一党という立場に安住し、内部の権力闘争が優先されているかのごとき観を呈しています。

このように考えれば、立憲民主党がまとまりを得るためには実際に政権を獲得するか、党関係者が政権の獲得を現実的な目標として目指せる状態に達することが重要となります。

その意味で、泉氏に求められるのは党内の融和ではなく、関係者が路線対立に気を奪われない状況を作り出すことに他ならないのです。

[1]泉氏、野党共闘修正探る. 日本経済新聞, 2021年12月1日朝刊4面.

<Executive Summary>
What Is an Important Alternative for CDPJ Leader Kenta Izumi? (Yusuke Suzumura)

Mr. Kenta Izumi was selected as the new Leader of the Constitutional Democratic Party of Japan on 30th November 2021. In this occasion we examine an important alternataive for Mr. Izumi to manage the party.

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