「内閣感染症危機管理庁」を創設するために岸田文雄首相に求められるのは何か

昨日、岸田文雄首相は首相官邸で記者会見を行い、感染症対策を統括する新組織として「内閣感染症危機管理庁」の設置を表明しました[1]。

新型コロナウイルス感染症への対策の際に明らかになったように、厚生労働省と内閣官房がそれぞれ施策を立案、実施することは機動的な対応を妨げるだけでなく、政策の重複や人的、物的、金銭的な資源の浪費にも繋がりかねないものでした。

また、国務大臣に便宜的に感染症対策を担当させても、省庁間の利害の調整が主たる役割となり、感染症対策そのものを主導することが難しかったのは、現にわれわれが見聞したところです。

その意味で、これまで各機関に設けられていた感染症対策関連部局を統合し、一元的な対策組織を設置することは、迅速的で効率的な対応の実現という点で重要な取り組みと言えるでしょう。

一方、新組織が内閣官房に設置される点には注意が必要です。

すなわち、昨年9月のデジタル庁に続き、来年4月にはこども家庭庁が新設され、さらに「内閣感染症危機管理庁」が置かれることになれば、従来以上に内閣官房の組織と権限が集中することになるからです。

もちろん、行政府の長として内閣総理大臣が指導力を発揮することは重要ですし、そのために内閣官房が主体的に問題に取り組むことも行政の活性化に繋がることでしょう。

しかし、内閣官房の肥大化が続けば、かえって円滑な執務の実現を難しいものにしかねません。

それだけに、中央省庁の再々編も含め、岸田首相には新組織を設けるだけでなく、行政機構の見直しにも取り組むことが望まれます。

[1]「危機管理庁」新設を表明. 日本経済新聞, 2022年6月16日朝刊1面.

<Executive Summary>
What Is an Important Point for Prime Minister Fumio Kishida to Form the Health Crisis Management Agency? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Fumio Kishida says that the Japanese Government will form the Health Crisis Management Agency on 15th June 2022. In this occasion we examine an important for Prime Minister Kishida to form the new agency.

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