都民ファーストの会が「ファーストの会」を結成する理由は何か

本日、東京都の地域政党都民ファーストの会は、国政政党としてファーストの会を結成するとともに、来る衆議院議員総選挙において都内の全25選挙区で候補者を擁立することを表明しました[1]。

2016年に発足した都民ファーストの会が翌年の衆議院選に向けて国政政党希望の党を設立したものの期待した成果を上げられず、結果的に国政に進出する計画が頓挫したことを考えれば、この度の新党の結成は前回の総選挙の雪辱を期すものと言えるでしょう。

一方、今年10月21日(木)に任期が満了し、遅くとも11月半ばには総選挙が実施されることを考えれば、都内の全選挙区に候補者を擁立することは出来るとしても、各選挙区で候補者の知名度を浸透させることは容易ではありません。

また、たとえ現任の都議会議員や著名人など、一定の知名度を有する候補者が出馬する場合でも既存の国政政党はすでに入念な準備をしているのですから、当選までの道のりが困難なんことに変わりはありません。

従って、ファーストの会は今回の総選挙に臨んで全候補者が落選する可能性も否定できないところです。

それでは、何故こうした不利な状況が明らかであるにもかかわらず、都民ファーストの会は国政への進出を計画するのでしょうか。

もちろん、前回の雪辱という側面があると考えることは難しくありません。

それとともに、都民ファーストの会の特別顧問を務め、実質的な指導者である小池百合子都知事が、人脈、政策、そして思想の点で依然として自民党と深くかかわっている点も見逃せません。

すなわち、国政における野党第一党の立憲民主党を中心とする野党共闘が進む中で、東京都では一定の支持を有する小池都知事との関係が予想されるファーストの会が総選挙に候補者を擁立すれば、どうなるでしょうか。

政権批判の票が野党共闘による候補者ではなくファーストの会に吸収され、結果として自公両党を利することになります。

この他にも、東京都の中で徐々に勢力を拡大している日本維新の会の牽制という意味も含め、今回のファーストの会の結成は、国政で議席を獲得するよりも、多分に与党への側面的支援という性格の強いものと言えるでしょう。

[1]都民フ、国政新党「ファーストの会」 衆院選候補擁立へ. 日本経済新聞, 2021年10月3日, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC031D50T01C21A0000000/ (2021年10月3日閲覧).

<Executive Summary>
Why Do the First no Kai Want to Fight a Battle They Cannot Win? (Yusuke Suzumura)

The Tomin First no Kai (The Tokyoite First Party) announces to form a new national party the "First no Kai" (literally The First Party) today. It seems so curious that they try to fight a battle they cannot win at the General Election. In this occasion we examine reasons of their plan.

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