『クラシックの迷宮』の生誕200年記念特集が示すスメタナの多様な姿

今日のNHK FMの『クラシックの迷宮』は、1824年3月2日に生まれたスメタナの誕生日と生誕200年を記念した「スメタナ生誕200年」が放送されました。

今回は、ノイマン、クーベリック、コシュラー、ターリヒ、ビエロフラーヴェクらの指揮によるチェコ・フィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団、BBC交響楽団、トロント交響楽団、NHK交響楽団などの演奏が紹介されました。

スメタナといえばチェコの国民楽派の象徴的な存在であり、特にオーストリア=ハンガリー帝国に支配されていたチェコの独立と民族的な自立への願いを音楽によって表現した作曲家として知られます。

一方、司会の片山杜秀先生は、以下のような視点からスメタナを捉えます。

  1. チェコ人としての独自性を出そうとして、ねじくれまくった生涯を送った。

  2. 新しいものに絶えず関心を持ち、ハプスブルク帝国といった狭い枠に囚われず、広くヨーロッパの音楽に注意を払った。

  3. リストの音楽への関心を通してワーグナーと結びつき、リストの交響詩とワーグナーの交響楽としてのオペラを自らのものとして育て上げた。

こうしたスメタナの理解について、片山先生は「スメタナがワーグナーの影響を受けたというのはうがった見方というご意見もございましょうが」と反論を念頭に置きつつ、どのような形でスメタナがリストやワーグナーの音楽を受容して行ったかを、具体的な作品の基づきながら検討が加えられました。

それとともに特に印象的だあったのは番組の最後に紹介された人形劇『ファウスト博士』序曲でした。

冒頭の混沌とした様子から浮き上がるような終わり方まで、「現在でも通用する作品」という片山先生の言葉通りの作品であるとともに、演奏時間にして4分に満たない小品の中にも様々な要素を織り込むところに、スメタナの多層的な姿が垣間見られました。

その意味で、今回の放送は従来のスメタナ像から出発しつつ、そのような理解を乗り越えた先に見える新たなスメタナの姿を映し出そうとする、いつにも増して意欲的で野心的なものであったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Introduces the New Aspect of Smetana and His Music (Yusuke Suzumura)

A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcast via NHK FM featured Smetana to celebrate his 200th birthday on 2nd March 2024. It might be a meaningful opportunity for us to understand new aspect of Smetana, who is recognised as the founder of Czech nationalistic music.

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