【追悼文】山崎正和先生とのいくつかの思い出

去る8月19日(水)、評論家で大阪大学名誉教授の山崎正和先生が逝去されました。享年86歳でした。

評論、劇作、随筆など様々な分野にわたる山崎先生の活動については広く知られるとことであり、2018年には多年の言論活動と創作活動に対して文化勲章が授章されています。

ところで、私が初めて山崎先生に直接お目にかかったのは、2011年10月28日(金)のことでした。

私は2011年9月から2012年8月までサントリー文化財団の鳥井フェローを拝命しており、フェローの活動の一環として財団主催の研究会に陪席する機会を頂戴していました。

このときの研究会は芳賀徹先生、高階秀爾先生、三浦雅士先生による「21世紀日本の芸術と社会を考える研究会」で、当時広島大学に所属されていた河本真理先生を招いて行われました。山崎先生はサントリー文化財団副理事長の職名により、オブザーバーとして参加されていました。

著作を通してのみしか存じ上げなかった先生方ばかりが揃う研究会は壮観の一言に尽き、河本先生の発表を受けて芳賀先生、高階先生、三浦先生が活発な質疑応答や議論を行う、活気あるものでした。

その様な中で議論が一段落するまで待機されていた山崎先生は、芳賀先生や高階先生から意見を求められると、「私はオブザーバーですから」と前置きされながら、河本先生のご発表やその後の議論を踏まえた発言をされました。

一連のやり取りの核心を突く指摘を受け、その後の議論はさらに活発になる様子を見ながら、「知的興奮」という、極めてありきたりと思われた表現の持つ意味の大きさを実感したことは、あたかもつい最近の出来事のように思い出されます。

その後、2015年10月から2017年5月まで行われた、サントリー文化財団が主催し、山崎先生が塾長を務められた『知』の試み研究会、通称「山崎塾」に塾生として参加し、ご指導いただく機会に恵まれました。

研究会では発表者と塾生、あるいは参加していた新聞記者や編集者の皆さんとの質疑応答や意見交換をまとめ、時には新たな問題提起をされるなど、山崎先生の真摯で示唆に富むお話は、われわれ若手の研究者にとって大いに得るところがありました。

最後に山崎先生にお会いしたのは2019年9月6日(金)のことで、お暇する際に「あなたはいつもきちっとしていて、帝大の学生みたいだね」というのが、山崎先生から頂戴した最後のお言葉となりました。

山崎先生から頂戴した多年のご厚恩に感謝するとともに、衷心よりお悔やみ申し上げます。

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Professor Emeritus Dr. Masakazu Yamazaki (Yusuke Suzumura)

Professor Emeritus Dr. Masakazu Yamazaki had passed away at the age of 86 on 18th August 2020. On this occasion I express miscellaneous impressions of Professor Emeritus Dr. Yamazaki.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?