「玉城デニー知事の平和宣言」で思ったいくつかのこと

昨日、沖縄県糸満市において令和2年沖縄全戦没者追悼式が開催されました。

式典では沖縄県立首里高等学校3年生の高良朱香音さんによる「平和の詩」の朗読や安倍晋三首相にビデオメッセージの映写などが行われました。

私は偶然NHK総合テレビで中継の模様を視聴することが出来たため、式典の様子を興味深く眺めていました。

その中でももとりわけ印象的であったのが、玉城デニー知事による平和宣言でした。

標準語、沖縄方言、英語を織り交ぜた平和宣言[1]は昨年と同じ構成[2]でした。

そして、玉城知事が沖縄方言で「いくさぬねーらんみるくゆーまにち」と読み上げた際、私は「戦のない世の中を待望する」という意であろうと推察したものの、具体的にどのような表現がなされているかと原文を確認したところ、「戦争ぬ無らん弥勒世(平和)招ち」[1]であることが分かりました。

「弥勒世」、すなわち衆生を救済する弥勒菩薩が現れる世の中が「平和」を意味する語彙として確立していること、あるいは現在ではなく未来に現れる弥勒菩薩に平和を仮託する弥勒信仰が語彙として沖縄方言に取り入れられたことが話者の文化的、歴史的、精神史的な背景をどのように反映しているかという点は、私にとって興味深く思われました。

もとより、「弥勒世」に「平和」と括弧書きで語が補われていたものの、沖縄方言の話者にとっては「みるくゆー」が「平和」の意であるのは当然のことなのかも知れません。

それでも、沖縄方言に不案内な私にとっては、新しい知見を得られた、今回の平和宣言でした。

[1]【全文】平和宣言 玉城デニー知事(2020年慰霊の日). 琉球新報, 2020年6月23日, https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1143371.html (2020年6月24日閲覧).
[2]平和宣言(令和元年). 沖縄県, 2019年6月24日, https://www.pref.okinawa.lg.jp/site/kodomo/heiwadanjo/heiwa/heiwasengen.html (2020年6月24日閲覧).

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Okinawa Governor Denny Tanaki and His Peace Declaration of 2020 (Yusuke Suzumura)

The Memorial Ceremony to Commemorate the Fallen of 2020  was held at a square near the Heiwa no Ishiji (literally Cornerstone of Peace) at Peace Memorial Park on 23rd June 2020. In this occasion Okinawa Governor Denny Tamaki addressed Peace Declaration of 2020 and emphasised an importance of our efforts to build a peaceful world.

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