トランプ氏の襲撃事件からわれわれは何を学ぶべきか

現地時間の7月13日(土)、米国共和党の大統領候補であるドナルド・トランプ氏がペンシルベニア州での選挙演説中に銃撃された事件は、トランプ氏から約120メートルから150メートルの距離で犯人が銃を構えられたという点[1]から、大統領警備隊の対応に改善の余地のあったことを示唆する指摘があります[2]。

確かに、演説の会場に入るためには金属探知機の検査を受ける必要があるものの、今回のように会場外への対応が十分なされていなかったことは、今後の改善が待たれる課題です。

また、大統領時代は防弾ガラスを設置して不意の襲撃に備えていたトランプ氏が、現在の選挙運動の中では同様の対策を取っていなかったことが、凶行を誘発した側面は見逃せません。

しかし、これらはいずれも重要ではあっても暴力によって政治活動を妨げようとする行為そのもののまででは些事にすぎません。

むしろ、どれほど警備や防禦の体制に間隙があったとしても、また、いかなる目的や理由があったとしても、投票ではなく暴力によって自らの企図を実現しようとすることが許されないのは論を俟ちません。

何故なら、もし暴力によって選挙が影響を受けるのであれば、そのような条件の下での投票には意味はなく、選挙はより大きな暴力を振るう者の意のままになるからです。

これは、どのような候補者においても共通の事項であり、たとえその主張や政策が極端であり、人々の顰蹙するところであるとしても、いかなる種類の暴力をも正当化することはありません。

それとともに、たとえ襲撃を受けても選挙活動を中断することなく、自らの強靭な意志と精神力を誇示する候補がいるとしても、有権者がそのような行動によって投票先を決めることは好ましくなく、いかなる国や地域の選挙であっても候補者の掲げる政策や主張が判断の基準となるべき点は、改めて強調されなければなりません。

もしそうでないのなら、選挙はより過酷な状況からの復活を競い合う場となりかねず、本来の目的そのものが失われるからです。

基本的な事柄であるだけに、今回のトランプ候補の銃撃事件を機に確認するところです。

[1]Gunman was a few hundred feet away from Trump, CNN analysis shows. CNN, 14th July 2024, s://edition.cnn.com/2024/07/14/politics/trump-rally-shooting-distance/index.html (accessed on 15th July 2024).
[2]要人警護に隙. 日本経済新聞, 2024年7月15日朝刊5面.

<Executive Summary>
What Is an Important Lesson of the Candidate Trump Shooting Incident or the Voters? (Yusuke Suzumura)

The Republican's Candidate for the US Presidential Election Donald Trump was shot on 14th July 2024. On this occasion, we examine the meaning of this incident for the voters.

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