「エリザベス2世の演説」が予想させる「今上陛下のお言葉」

現地時間の4月5日(日)の19時、英国女王エリザベス2世陛下が英国及び英連邦に向けてテレビ演説を行いました[1]。

演説の中で、エリザベス2世陛下は新型コロナウイルス問題に取り組む関係者への謝意を示し、国民に「自宅待機」と「自己隔離」の継続を求めるとともに、世界各国の協調と連帯を訴えます。

視線が揺らがず、最後まで国民の一人ひとりに語りかけるような様子や、演説の最終部分でのエリザベス2世陛下の「私たちは再び友人たちと一緒になり、家族と一緒になり、そして再会することでしょう。」という発言は、かつてエリザベス王太后陛下が担っていた「王室の団結と国民との橋渡し」の役割を、エリザベス2世が果たしていたことを印象付けるものでした。

また、「私たちはともに新型コロナウイルス感染症に取り組んでおり、われわれが連帯し、固い決意を持っているなら、その時にはこの病気に打ち克つことが出来ると確信しています」という指摘は、第二次世界大戦に一人の軍人として従軍した自身の体験が反映されたのかも知れないと思われるところです。

エリザベス2世陛下がクリスマス以外に演説を行うことは極めて異例なだけに、今回の談話が英国民に与える影響は小さくないことが推察されます。

ところで、影響力という点を考えるなら、日本においても、2011年3月16日(水)に東日本大震災を受けてお言葉をたまわった上皇陛下[2]の先例があります。

「古今未曽有」とも「千年に一度」とも表現された大規模な災害に際し、被災地の状況に深く心を痛められた上皇陛下のお言葉が人々に大きな印象を与えたことは周知の通りです。

何より、日本国憲法の定めに従い、象徴天皇として時事的な事柄への関与を控えられてきた上皇陛下が異例の演説をされたことは、国内外に震災の影響の甚大さを伝えることになりました。

現在、世界各国で新型インフルエンザの感染が拡大しており、日本も新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正による緊急事態宣言の発令が予定されている[3]だけに、今後、既存の社会制度や秩序は大きな変化に直面することになります。

一方、今上陛下は、上皇陛下と同様に日本国憲法の定めに従って象徴天皇としての務めを果たされているだけに、もしテレビ演説をされることがあれば、その影響は大きなものとなることでしょう。

それだけに、今上陛下がテレビ演説を含めて何らかの「お言葉」を発せられることがあるのか、今後の動向が注目されるところです。

[1]The Queen's broadcast to the UK and Commonwealth. The home of Royal Family, 5th April 2020, https://www.royal.uk/queens-broadcast-uk-and-commonwealth (accessed on 6th April 2020).[
[2]東北地方太平洋沖地震に関する天皇陛下お言葉. 政府インターネットテレビ, 2011年3月16日, https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg4545.html (2020年4月6日閲覧).
[3]緊急事態宣言 あすにも宣言へ 7都府県1か月程度で 安倍首相. NHK NEWS, 2020年4月6日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200406/k10012370791000.html?utm_int=all_side_ranking-social_003 (2020年4月6日閲覧).

<Executive Summary>
Will Emperor Naruhito Make His Address on an Outbreak of the COVID-19 Like Queen Elizabeth II? (Yusuke Suzumura)

Queen Elizabeth II made her speech concerning on the COVID-19 to the UK and Commonwealth via TV on 5th April 2020. It implies that Emperor Naruhito will make his speech like the queen, since her speech might be remarkable for people of the UK and Commonwealth and Former Emperor Akihito gave the speech after the Great East Japan Earthquake on 16th March 2011.

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