NPBの現役ドラフトはいかなる意味と可能性を持つか

昨日、日本野球機構(NPB)が今季から導入される現役ドラフトの実施方法を発表しました[1]。

具体的な実施方法は以下の通りです。

(1)各球団は保留選手名簿が公示される2022年12月2日(金)の午後3時までに現役ドラフトの対象とする2人以上の選手リストをNPBに提出する。
(2)全対象選手の中から2022年12月9日(金)の現役ドラフト会議当日に各球団が獲得を希望する選手を議長に伝え、希望球団数が最も多い選手を提出した球団Aが最初の指名権を得る。
(3)球団Aが希望した球団Bの選手を獲得すると、次の選手の指名権が球団Bに移る。
(4)これ以降も同様に選手を指名された球団が指名権を獲得する。
(5)指名権を得る球団がなくなった場合は、獲得希望がより多く寄せられた選手を現役ドラフトの対象選手として提出した球団が優先される。

こうした手続きは、一見すると煩雑なもののように思われるかもしれません。

しかし、出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化させるために実施されるという新制度の趣旨に照らせば、各球団が他球団から指名される可能性の低い選手を対象として提出することで制度を形骸化させることや、周囲から見れば対象となりうる選手が3人以上いるにもかかわらず最低限の2人しか対象とせず、選手の移籍の活性化を阻害するような方策を排除しようとする試みは、意義あるものです。

実際、主力選手が大リーグに移籍したことで控えの選手が活躍の場を与えられ、本来の実力を発揮できたという類の事例は少なくありません。

それだけに、選手の移籍を活性化させることは、より多くの選手が出場の機会を得るためにも重要な措置となります。

一方で、確かに対象となる選手への配慮という側面もあるものの、球界として新機軸となる取り組みを非公開で行うことは、NPBの存在感を高めるという点から検討の余地があると言えるでしょう。

また、制度を実施しても、現役ドラフトによって移籍した選手が新球団で実際に起用されなければ、制度そのものはたちまち名存実亡の状態になりかねません。

その意味でも、今回の新制度がどのように運用され、活用されるかが大いに注目されます。

[1]現役ドラフトのルール発表. 日本経済新聞, 2022年11月8日朝刊41面.

<Executive Summary>
What Is a Meaning and Possibility of NPB's Draft for Active Players? (Yusuke Suzumura)

The Nippon Professional Baseball (NPB) starts the new system, the Draft for Active Players, will be held on 9th December 2022. On this occasion we examine a meaning and possibility of the new challenge.


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