「都市の封鎖」は「新型コロナウイルス問題」の解決にいかなる影響を与えるか

現在、世界各地で行われている、人々の外出の制限などを厳密に行う「都市の封鎖」は、一見すると新型コロナウイルスの感染の拡大を抑制できると思われるかもしれません。

また、新型コロナウイルスの感染が山場を過ぎたと考えられているイタリアの事例を参照し、保健当局による早期の介入や都市機能の抑制措置などの重要性が指摘されています[1]。

しかし、もし「封鎖」を解除した後に感染が拡大したらどうなるでしょうか。

この時、「封鎖を解除したから感染が拡大したのだ、だから、再度封鎖すべきだ」という意見が、特に国民の間から呈されることでしょう。

こうなれば、ひとたび「都市の封鎖」を行った当局は批判を恐れて容易に「封鎖の解除」を行えず、人々の日常生活や経済活動は長期にわたって停滞することを余儀なくされます。

これに加えて、もし「都市の封鎖」によって新型コロナウイルスの感染の拡大を抑制できたとしても、感染の抑制を確認するための期間が必要になることを考えれば、社会活動が正常化するまでに6か月を要する見込みであるという指摘もなされています[2]。

日本の場合では、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正により、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあり、全国的かつ急速な蔓延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼす惧れがあるときに「緊急事態宣言」を発令できるものの[3]、都道県知事が特措法に基づいて外出や催事の自粛などの要請や指示を出しても、フランスなどのように違反者に対する罰則の定めはありません[4]。

その意味で、「都市の封鎖」は「封鎖した」という事実によって人々が安心感を得ることは出来ても、新型コロナウイルスの感染の拡大を抑止するための唯一の対策ではないことが推察されます。

このように考えれば、「都市の封鎖」は政治的な側面からも、可能な限り実施を避けることが望ましいのかも知れません。

[1]Italy Appears to be Flattening the Curve. What Did the Country Do Right?. TIME, 2nd April 2020, https://time.com/5814412/italy-flattening-curve/?utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_campaign=the-brief-coronavirusitaly&utm_content=20200404 (accessed on 4th April 2020).
[2]Coronavirus: Six months before UK 'returns to normal' - deputy chief medical officer. BBC, 29th March 2020, https://www.bbc.com/news/uk-52084517 (accessed on 4th April 2020).
[3]新型インフルエンザ等対策特別措置法. 第三十二条.
[4]「緊急事態」強制力に限界. 日本経済新聞, 2020年4月3日朝刊4面.

<Executive Summary>
Is a Lockdown an Only Measure to Prevent the Spread of the COVID-19? (Yusuke Suzumura)


It is said that a lockdown might be applied in Japan, especially in Tokyo. It seems an adequate opinion, however it is not an only measure to prevent the COVID-19 and often a kind of a political performance.

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