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コンピテンシーと業務知識

あなたが募集していた総務のポジションは人気が無く、2人の応募者しか居なかったとする。

1)同業他社の総務で長年キャリアを積んできたが、モチベーションが低く、仕事も遅くて漏れのあるAさん
2)総務業務は未経験の地方公務員事務職出身だが、モチベーションが高く、仕事も細やかなBさん

こう書き下せば、Bさんを選ぶ方も相応に多いだろうが、実際には、上記説明の後半は面接では確認しにくい類なので、なんだか暗いし、メールの返事も遅いが、経験者だからという事で、ほぼAさんが選ばれる。もちろん、実際に採用して活躍するのはBさんである事が多く、理由は高度に専門的でない業務知識は、勉強して経験すれば比較的短期間で身に付くが、モチベーションや仕事の遅さを改善するのは極めて難しいからである。後者を、一般には資質とかコンピテンシーと呼ぶ。

この総務は極端な事例だが、程度の差はあれ、実際の採用の現場には頻繁に起きている。採用側は、募集するからには、そのポジションで活躍する人を採用したいのだが、その見極めの手法として

・その業務をやった事があるか=「業務知識」
・その業務を遂行できる資質があるか=「コンピテンシー」

のどちらに重きを置くかと言えば、業務知識の方を必須要件とする事が多いからである。後者は、必要なコンピテンシーを定義するのが、頭を使い、使っても曖昧で総花的なものになりがちで、かつ何とかコンピテンシーを定義しても、その有無を見抜くのが面接ではそう簡単では無い。
もちろん、業務知識とコンピテンシーの両方ある事に越した事は無いが、そういう理想的な候補者は簡単には転職市場には出てこないもので、理想的な候補者がいない時に何を優先すべきかは、採用側の価値判断が問われる意思決定である。以前、人事労務畑が歴史的に出世コースである事が業界通念となっていた投資先企業の経営者が、これでは社員が人事を見て仕事をしてしまうと、人事のヘッドを人事労務畑から出さず、傾聴力のあるタイプのシニアな営業を代わりに据えた事があった。当初1-2年は混乱があった様だが、その会社はより顧客を向いたカルチャーに変わっていった。これは外部採用では無いが、人事において業務知識よりコンピテンシーを重視した事例である。

という事で、ご多分に漏れず、PEファンド各社の採用もそう楽では無いと聞くが、

1)投資銀行のIBD出身で、モデルテストの結果は合格ラインスレスレ、リファレンスは賛否両論のAさん
2)投資銀行のエクイティリサーチ出身で、モデルテストの結果は合格ラインスレスレ、リファレンスは大絶賛のBさん

これでBさんを選べる様になると、自らもコンピテンシーで採用出来てる感はある。(が、実際にはとても難しい)

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