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星の降る街(前編・無料公開)

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長編小説「星の降る街」の前編を無料公開しています。
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#小説

(小説)星の降る街 13

「探している途中に、あまりにも神様や仏様の話を聞きすぎたかな」  菅野は力なく笑った。 「…

(小説)星の降る街 12

 嫌な予感がした。  すぐにテレビを付けると、三陸沖が震源でマグニチュードは八・九だとい…

(小説)星の降る街 11

マッサへ  今日はレストランのお仕事を辞めてきました。前から申し出ていたので急ではありま…

(小説)星の降る街 10

 同じ喫茶店ではあるが、今は少し気が重い。  人の好さそうなマスターは「お二人はお似合い…

(小説)星の降る街 9

 清子は三十七歳になっているがどこにも嫁いでないことや、敏正叔父さんが十五年前に亡くなっ…

(小説)星の降る街 8

「やっぱり雨じゃ。お参りは無理じゃ」  兄は諦めたと言った風にスクランブルエッグを作って…

(小説)星の降る街 7

 だけど、私はどちらの宗教とも到底理解には及ばない。形や雰囲気は大きく違うが、根本が同じような気がしているので、両方とも信ずるに値するかもしれないとは考えられるが、日常生活からかけ離れているためか、教えを真剣に考えたことはない。似たところも含めて観光としては何度も行っているが宗教の必要性など知ろうとしなかった。  なんとなくそんな話をした。  笹井は意を得たように目を輝かせている。 「そうなんですよね、似ています。洋の東西を問わず社会が複雑になりストレスが心を蝕み始めたからな

(小説)星の降る街 6

 私は嫌な夢の虜になっているためか、目に入る風景も音も匂いも何も興味は持てなくなっている…

(小説)星の降る街 5

 母は静かに話し始めた。 「それぞれに背負ってとる宿命はどうしようもないけどなあ、人と触…

(小説)星の降る街 4

「島の巡礼か。それで癌を退治しなくちゃね」 「治るなんてね、まさか。ハイキングみたいなも…

鬼哭啾啾・「星の降る街」前書きに変えて

 ロシアがウクライナに侵攻したのは、2022年2月24日だった。国境の小競り合いはしばしば起き…

(小説)星の降る街 1

 飛行機は何度か雷を受け機体を大きく揺らしながらパリのシャルル・ド・ゴール空港に着陸した…

(小説)星の降る街 2

 両国駅の切符売り場前で掛井有里に電話した。幼馴染で、二十代の一時期に交際したが、結婚に…

(小説)星の降る街 3

 私は元々大手の総合食品メーカーに勤務していた。三十八歳から五年間、広報部で商品カタログや小冊子、広報誌などの執筆や編集作業が主な業務だった。その時の取引先という縁で、離婚とほぼ同時に会社を辞め、文京区にある編集プロダクションと契約し、編集者として仕事をしていた。本を作るような大きな仕事は自宅へ持って帰っても出来るが、効率よく稼げる特急制作物の広告代理店からのパンフレットや官公庁の広報物など打ち合わせの必要な企画デザインや執筆物は出勤しないと出来なかった。赤田社長に事情を説明