『2020年のさざえ堂ー現代の螺旋と100枚の絵』を観た(2020/2/12)
1度回せばお経を一巻読んだことになる”マニ車“
ピンポイントでその日に御参りすれば46,000回御参りした事になる“四万六千日”
一巡する事で百観音巡礼が叶う、螺旋する三層構造で上りと下りが合流しない一方通行の建造物"さざえ堂”
これらは文字の読めない人や遠方の人でも徳を積めるようにと考えられた良心的なシステムという説もある。
現在開催されている『2020年のさざえ堂ー現代の螺旋と100枚の絵』は、群馬県太田市内にある曹源寺さざえ堂が、2018年12月25日に国指定重要文化財になった事をきっかけに、同市内で唯一螺旋する三層構造の建造物という共通点があるという事で、太田市美術館・図書館で企画された。
いわば美術館自体が作品ととらえた展覧会だ。
1階は三瀬夏之介さんの日本画。1階から2階に続く回廊にあるマイクを向けられたアンプとモニターは、蓮沼執太さんが実際にさざえ堂を歩きながらマイクを床に這わせて採取した音と映像。2階は持田敦子さんによる、舞台セットの様に板で区切られた一方通行の部屋の集まり。そして百観音巡礼にならい高橋大輔さんは計100枚の絵を1階から3階までの各フロアに展示していた。
展示順路も螺旋する一方通行になる様に工夫されていた事で、2階は通常使わない非常口から3階に向かう仕様になっていた。
会場案内の方に何部屋目にある非常口から出られますと説明されたにも関わらず、うっかり通り過ぎてしまって中々2階から出られなかった。
しかしそのお陰で部屋は最初の部屋と最後の部屋が繋がっているという事と、時間によって移動しているという事を知る事ができた。
太田市美術館・図書館というさざえ堂は、雑誌や古地図の様なものや小さな玩具が組み込まれつつも、胞子が浮遊する太古の森と仏様の様な風景が描かれた日本画から想像を膨らまされるところから初まり、他人が実際に歩んだ記録を耳と目で取り入れる事で曹源寺さざえ堂を追体験し、自分自身で扉を開け閉めして、探してみると天井付近にも飾られている大小様々な絵画作品を発見していく事の喜びを感じ、読書している人の邪魔にならない様気に掛けながら本棚と席と壁の隙間をすり抜けて行く。
曹源寺さざえ堂に倣っているという事は、つまり展示物は観音様と思って崇めるべきなんだろうか…と思いながら観に行ったのだけれど、そういう意味では無く、一巡する事で”絵画” ”音と映像” ”インスタレーション” そして ”建造物” と、時代の移り変わりと共に変容し様々な媒体や思想と折衷されていくアートシーンをまるっと楽しむ事ができる展覧会だった。
そして図書館と美術館が融合する事で、新たな文化の在り方が生まれるかもしれない、と、未来を想像してしまう展覧会だった。
会場:太田市美術館・図書館
期間:2020/2/6~5/10
料金:300円
※写真撮影可・動画撮影禁止