『リボーンアートフェスティバル2019』を観た(2019/9/19~20)
2019年9月、長年勤めていたそこそこのブラック企業を正式に辞めた私は、とことんやりたい事をやっていた。
無職がやりたい100の事を考えて、着々と実行していた。
平日休日の縛りがない今だからこそ、旅行に沢山行きたい。そしてアート作品を観たい。という気持ちが湧き出てくるのは必然であり、『リボーンアートフェスティバル2019を観に行く。』という項目も早々にリストアップ済みだったので、きっちりと実行に移していた。
リボーンアートフェスティバルは、宮城県牡鹿半島、石巻市街地、網地島で開催された『アート』『音楽』『食』をテーマにした芸術祭である。
2回目である2019年のテーマは『いのちのてざわり』だ。
リボーンアートフェスティバルの玄関口である石巻駅は、駅舎を出ると009、キカイダー、ロボコン、と石ノ森章太郎ワールド全開。駅前通りだけでも充分楽しめる
石ノ森章太郎漫画館には入らなかったけれど、建物だけでも一見の価値アリ。近未来感と可愛さを兼ね備えたフォルム。
オフィシャルツアーはガイド付きで効率良く殆どの作品を観る事ができるとの事なので、1日目は牡鹿半島コース、2日目は網地島コースに参加した。
1日目、駅前からツアーバスに乗り込み、ガイドさんの話に耳を傾けながら流れる景色を眺めた。
駅前の風景はよくある地方都市の味わい深い建物にまざり、新しい建物もちらほらと建っていた。そういえば駅前のトイレは仮設なのに、ウォシュレット付きで仮設という感じがせず、技術力の進歩を感じた。
風景が進むにつれて見たことの無い背の高い建物が散見するようになり、時折、家の基礎だけで雑草が生い茂る区画、沿岸部には沢山の働く重機。新しく建てられたであろう信号機は、まだ稼働していない。
ガイドさんによると、背の高い建物は津波が来た際に避難するタワーで、更に増やし、防潮堤を高く強固にする作業も進められているらしい。
石巻は現在、2011年3月に起きた東日本大震災の大津波で受けた傷跡を修復し、未だ何処にもない安心して暮らせる街を築こうと奮闘していた。
【荻浜エリア】
荻浜には牡蠣の養殖場があった。
海岸沿いは白く、歩くとゴリゴリとした感触。砕けた貝殻でできているせいでそうなっている様だ。
バスを降りた地点から数分歩き林を抜けると、White Deerがいた。
White Deer (Oshika)
Analemma–Slit : The Sun,Ishinomaki
きせい・キノコ‐2019
Emerge
かなたのうみ
写し出される陰から太陽の動きを感じ取るものや洞窟内部で展開される作品等、原始的な野性味のある太古のロマンを感じる空間だった。
【小積エリア】
このエリアは訪れてすぐにマツキチという名前の狩猟犬の女の子がお出迎えをしてくれた。カラカラと首に付けたベルを鳴らしながら近寄ってきて、一切吠えずに撫でさせてくれた。狩りの時は豹変するらしい。
すべての場所に命が宿る@牡鹿のスケッチ
Post Humanism Stress Disorder
作品は野外のものが1点と小屋数ヶ所にそれぞれ展示されていたのだが、山中に落ちている骨や木の写真や、割と直視するのは辛い鹿肉の解体の写真、鹿等の骨や石を使った作品や神に捧げる祭りの舞踊映像等、野生生物が生活に影響を及ぼす地域に居るからこその、密接した生と死の観念、敬意が表現されていたと思う。
【鮎川エリア】
鮎川エリアにはリボーンアートフェスティバルの期間に合わせて”ホエールタウンおしか”というお土産品や飲食店の入った施設が出来る予定が、若干遅れが出ているようで、近くにある仮設の商店街で昼食をとった。(ホエールタウンおしかは2019/10/4オープンしました。)
くじらのカーニバル
鮎川の道 | 虫 | 猿と桜
風の部屋
こちらのアイスキャンディーは本当に食べて良くて、食べ終わると出るアイスの棒を集めて作品の材料にしていた。
痕
掘削
白い道
東日本大震災の避難所として使われていた建物が避難所の役目を終えてからほぼ手付かずの状態になっていてそのままの状態を活かして作品にしたものや、今現在の日常の風景である沿岸部の工事の風景の映像をひたすらに流し続けるもの等、被災地に住んでいない人からすると震災がかつての事になりつつある昨今、確かにあった事なんだよ。と語りかけている様な、それでいてそれでも美しい地域である事を教えてくれているようだった。
【桃浦エリア】
1日目のツアー最後、桃浦エリアは旧荻浜小学校の廃校舎を中心に展示をしていた。超有名どころである草間彌生さんや増田セバスチャンさんの作品もあった。
**脳舞台 – 語り継ぎ、言ひ継ぎ行かむ、不尽(ふじ)の高嶺(たかね)は – **
White Forest of Omens
Microcosmos―Melody―
Peach Beach, Summer School
ぽっかりあいた穴の秘密
淡(あわ)
新たなる空間への道標
命は循環していて、命は神に送られて神は命を人に与える。我々の魂は永遠に続く
割と見た目がポップな作品が多かったけれど、儚さや、津波被害防止の為に景観が無くなる事に対する気持ちや、集落の在り方、歴史について考えていてギャップが凄かった。
【網地島エリア】
2日目、船で網地島へ向かった。
網地島はリゾート地として人気で、網地白浜海水浴場も有名だ。途中田代島という近年猫島として有名な島を経由して網地島にたどり着くのだが、この時私はまだ、網地島もラブリーなにゃんこで溢れかえっていることを知らなかった。
無題
組織学の断面
ガーデン
ある場所
私ーー雑草ーーー
類推の山
↑この作品はカラフルな光と爆音の不協和音が流れているんだけれど、カルト小説の世界観を表現しているらしい。
幕間
限られたフィールドとリソースから見えてくるもの
↑観に来た人が島内で拾ったものをこのボードの上にのせていく作品。
小道ーー場所の破壊的な征服
蓬莱島古墳
網地島エリアは離島という事もあって、より大自然と異国情緒を感じられた。
途中、網地島で宿泊してその宿のプランで車移動してアート作品を巡っていると思われるグループも何組かいて、何となくサファリツアーの様な雰囲気も漂っていた。
最初の方で記したとおり、現在石巻は復興中なのだが、そもそもリボーンアートフェスティバルというイベント自体復興の為に始めた側面もあり、”被災した地域”というネガティブなイメージを払拭すべく、ポジティブな面を見出す為のものでもあるらしい。
実際、アートフェスティバルを開催するという事で手付かずになっていた土地が整備されたり、美しい景観を復活させたり、いい作用も起こしている。
2日目に訪れた網地島エリアにそういった土地が多く、1日目に訪れた島袋道宏さんの『白い道』という作品もその一つだ。
抗えない自然災害の脅威とそれでも立ち向かう人々。
大地の恵みを頂き大地を削り生き抜く人間の業の深さ。
人間の力強さを楽観的でもないけれどポジティブな面もネガティブな面も表していて、生きるという事は、何であれそういった血生臭さを伴う共存関係である事に気付かされるイベントだった。
しかしそれ以上に、石巻の風景の美しさ、網地島の人懐こい猫達の魅力を十二分に味わい、またこの街を訪れたい。という気持ちが強くなるイベントだった。
無職になって間もない時期に一人で訪れた旅行先で、社会人になってから初めて有休を取って初めて一人旅をしたという女性とお話を出来た事も良い思い出。また自由に旅行に行ける日常が取り戻せたら行きたい場所の一つ。
期間:2019/8/3~9/29
場所:牡鹿半島、網地島、石巻市街地、松島湾(宮城県石巻市、塩竈市、東松島市、松島町、女川町)
料金:3,000円
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