アトピー戦略

 私はアトピー持ちだ。

 首、ひじの内側、ひざの裏側など、身体のいたるところに発疹とかゆみが起こるので、小学生のときから病院に通い、薬をもらい続けている。

 
 「小さいころはひどくて、大人になればよくなるよ」という同級生の誰かのお母さんから聞いた話を、母から聞く。

 
 誰かのお母さんの話というのは、当時のわたしはかなり信用していたので、この状態がずっと続くわけではないことを期待していた。

 中学生のときまでは従順に病院に通っていた。しかし、高校生になっても症状は一切よくならなかった。なにも塗っていない状態でも、首の色素沈着がひどく、顔だけにファンデーションを塗って浮いているような状態だった。

 

 アトピーってなんだよ。そもそも語感が好きになれない。アトピー性皮膚炎の皮膚炎の方はわかる。これには皮膚になんらかの症状があるんだなという漠然としたイメージが伝わってくる。

 
 アトピーはギリシャ語で「変わった」とか「奇妙な」を意味する単語のatoposに由来するそうだけど、造語らしい。

 
 造語って。ヘイトをもたらす存在なのに、ポップな語感に親しみが込められているような気がして好感が持てない。

 
 アトピーって学校で髪ゴム貸しても返してこなさそうだし、体育の後に汗拭きシート毎回せがんできそうだな。でも貸しちゃうんだよな。というか、あげてるのか?

 
 そんなことを考えながら、ときどき学校帰りに病院に向かっていた。

 
 いまでも通院しているけど、少しずつ彼女の扱い方がわかってきた。同じ湿疹でも、春は花粉、夏は汗、秋は落ちつき、冬は乾燥というように原因がそれぞれ違うことを知った。

 くり返される湿疹とかゆみをどう減らすか向き合うことは、自分の身体を大事にするきっかけにもなっていると思う。

 うっすらとした嫌悪はあるが、奴の戦略通り、親しみを感じてしまっているのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?