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食レポ

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#スイーツ

食レポ|空也

 その店は銀座の中央通りの裏にひっそりと軒を構える。「空也」だ。スマートフォンを片手に、店を探り当てる。  店内に視線を注ぎ、そこには小箱が重なっていた。信じられなかった。「空也」の「もなか」を予約せずに入手できる。それは僕にとって小さな驚きであり、感覚としては奇跡に近い。  その違いは目立たない。しかし、店構えのように、その繊細な違いは口を動かすほどに全身へと広がっていく。自然に。しっとりと。そのあんは美しくも、奥ゆかしい質を兼ね備えている。生まれたばかりのような弾ける

食レポ|玉川屋のコーヒーわらび餅

コーヒー味のわらび餅だ。 最大の魅力はその食感。 弾力のある歯ざわりが先へと促す。 「噛んで楽しめるコーヒーゼリー」と表現したい。

食レポ|浪花家総本店

「皮とあんこ」ではない。 「あんこと皮が一体」。 浪花家総本店のたい焼きは、そんな一品だ。 厚過ぎず、薄過ぎず。 皮はさっくりともっちりを併せ持つ。 その中に包まれたあんこは、自然で素朴な甘みを口いっぱいに広げる。 しっぽの先まで詰まったあんこを眺めながら、日常的な幸せに浸った。

食レポ|果実園 リーベル

 白く輝く店内。甘く、爽やかな果実の香り。人々の弾ける笑顔。長女との約束の場所。目黒の「果実園 リーベル」にはそんな風景が広がる。  手首の検温と手の消毒。その後、奥のテーブル席へと案内された。果実にクリーム、チョコレート。甘みに没頭する。それが今日の目的だ。意識は仕上がっている。「いちごパフェ」「マンゴーパフェ」「チョコレートパフェ」。思いは三品を巡る。逡巡の末、メニューの先頭にあった「いちごパフェ」を注文した。  イチゴの表面にイチゴのソース。表面が照明を反射する。塔

食レポ|ハーゲンダッツのキャラメルナッツクッキー

偶然の出会いだった 「ファミマ限定」「ハーゲンダッツ」「キャラメルナッツクッキー」 絶賛のツイートが添えられ、それらの言葉が視覚と意識を強く刺激する キャラメルの芳醇な甘みが脳から身体中へと浸透した 茶色いキャラメルの海にスプーンを差し込む 粒アーモンドの粗い食感 キャラメルの突き抜けるような甘みとアイスのまろやかさ 波長の異なる快感が一気に押し寄せる

食レポ|成城石井の和栗あんぱん

昔からモンブランに眼がない そのモンブランがあんぱんにそのまま入った 品を匂わせる栗とあんの融合、百三十一円 静かな衝撃を与えた贅沢な一品

食レポ|cote courの東京ブラウニー

濃厚な味わいと食感は十二センチの宇宙遊泳だ 外はさくさく、中はみっちり 二分間の圧倒的なチョコーレト体験に身を任せる 二分後、ブラウニーを完食する 僕は宇宙に漂ったままの意識を傍観した

食レポ|マッターホーンのバウムクーヘン

気品を感じさせる味わいだ 洋酒のほのかな香りが鼻腔を流れる 樹木の年輪のように、生地が何層にも折り重なる 微妙な起伏をなで、人の手で作られた温もりに触れた 美しきバウムクーヘンと形容したい

食レポ|エニスモアガーデンのパウンドケーキ

塩味の利いた濃厚なチーズの味わいが口中に広がる しっとりとしたパウンドケーキの歯ざわりも快い 少量でも満足感でいっぱいになる、良質な証拠だ こうした幸せを積み重ねていきたい