書評 #75|総理にされた男
総理の物まねをする役者が総理になったら。この突飛な設定がまずは関心を引く。そして、複雑な中にも入り組んだ人間模様を描く政治の世界を簡素化し、魅力的な物語へと昇華してくれることをも期待した。中山七里の『総理にされた男』はその期待に十二分に応える作品ではないだろうか。
政治は複雑である。さらに突き詰めれば、その複雑さは理性ばかりでなく、人間と人間によって営まれる政治が往々にして不条理であるからだろう。そこに風穴を開ける真垣統一郎こと加納慎策の純粋無垢な志は痛快だ。舞台袖で演