マガジンのカバー画像

つくる、食べる

21
食に関すること。
運営しているクリエイター

#コラム

栗の話

もうすっかり涼しくなった。

この間散歩に行ったら、栃の実がたくさん落ちていて、切り株にきれいに集められていた。木の実って不思議と集めたくなるものだ。それが大きくてきれいなものなら尚更。
それを見てふと栗ごはんが食べたくなって、連休中に生栗を買って処理でもしようかなと思っていたのだけれど、山登りをしたら疲れ果てて、連休後半にはそんな気も消え失せてしまった。

栗の処理は気力と体力、そして集中力がな

もっとみる

アップルパイの話

りんごの豊富な季節になってきた。

果物全般そうなのだが、いつも買うか迷う。ビタミン摂取にはちょうど良いのだけれども、ひと袋を買うのは少し多いなと思って躊躇してしまう。1個立派なものを買うのも、それはそれで気が引ける。

りんごといえばアップルパイが好きなので、生で食べるのに多いなら余りで作ればいいのだけれども、そして作って作れないことはないのだが、これまでどうにもアップルパイは作る気になれなかっ

もっとみる

お盆にはカレー

毎年この時期は夏バテと世間の圧と世間話から思い出される過去のいろいろや何やかんやで精神的にしんどくなりやすいこともあって、カレーを作ることに決めている。

作るのはチキンカレーだ。

半分は考えるのをやめる逃避目的なので、スパイスを揃えて玉ねぎを炒めるところからやる。とは言っても材料さえ揃えれば作るのはそんなに難しくない。面倒なだけで。
ネットで数年前にいいレシピを見つけてから、ほぼ毎年作っている

もっとみる

Nとズッキーニ

夏は食べることが億劫になる。

適当に切った生野菜と、焼いただけの野菜と、冷奴、ナスとみょうがの味噌汁。夜に食べる気がするのは、そんなのくらい。白米も食べる気がしないから米が減らない。

お昼は前は学食に行っていたのだけど、最近はなにもピンとこなくて、おにぎり1つくらい買ってもう満足してしまう。

特段暑いわけでもないのに、今年は梅雨明けも遅いのに、こうも食べる気力を失うのはなんだろうか、と思って

もっとみる

枝豆ノスタルジー

7月8月といえば、ナスにトマトにきゅうりにとうもろこしに、カラフルな夏野菜がいろいろ出て、ほぼ食べるものは野菜か豆腐かで生きてる時期なのだけど、この時期の記憶にある中での特別なたべものと言ったらやっぱり枝豆、そしてずんだのぼた餅。

ぼた餅って、じつはものすごく作るのが手間だ。たくさん作るのでなければやってられないくらい面倒。ハレのたべものなだけある。
昔、ばぁちゃん家に世話になっていた頃、夏に人

もっとみる

適当なピクルス

青梅やらっきょうが出る頃、毎年ピクルスを漬けている。

キュウリ、セロリ、ミョウガは外せない。あとは気分とタッパーの隙間に合わせてにんじんや玉ねぎやパプリカなど。
ざくざく切って湯通しして、よく洗って乾かした筒型のタッパーに詰める。

ピクルスは大学生の頃からやり出したのだが、昔はちゃんと酢や砂糖を鍋で一度沸騰させて液を作り、容器も煮沸消毒した耐熱容器で、とかやっていた。台所に広がるむせるような酢

もっとみる

ふきの話

ふきを煮ることにした。

ふきは数ある山菜の中でも扱いが簡単で、しかも仄かな苦味とシャキシャキの歯ざわりがいかにも山菜らしくてとても好きだ。
とはいえ、ふきの味が恋しくなり、自分でやるようになったのはここ数年のこと。それまでは全然、思い出しもしなかった。

昔は私にとっての山菜ランキングで不動の第一位は筍、第二位はたらの芽だった。ふきはというと、ランク外。
しかし、山菜類のアク抜きや天ぷらを自分で

もっとみる

保つこと

昨日は軽く大掃除をした。

普段は面倒くさがりなので掃除はササッとで済ませてしまうのだが、たまにストレスが溜まったときや何かから逃避したいときに唐突に入念に掃除したくなるときがある。そんな掃除欲がまた降ってきたのだ。

特に水回りをやると気持ちがスッキリする。風呂、トイレ、洗面所、台所。あとから使うときに確かにきれいだとわかりやすく、簡単に達成感と自己効力感を感じることができるのがいい。
目に見え

もっとみる

いちじくの話

夜がすっかり秋めいてきた。

私の故郷の田舎では、きっと今頃金木犀の香りが漂い、秋祭りのお囃子の練習の音が響き、家ではイナゴやいちじくをせっせと煮ているんだろうと思う。地元はたいして好きではなかったが、あの秋の空気感だけは好きだった。

金木犀、イナゴ、いちじく、秋の涼風。

それらはすべて、私を秋というものにどっぷりとひたらすキーワードになり得たのに、今住んでいるここには秋の涼風以外共通するもの

もっとみる