枝豆ノスタルジー

7月8月といえば、ナスにトマトにきゅうりにとうもろこしに、カラフルな夏野菜がいろいろ出て、ほぼ食べるものは野菜か豆腐かで生きてる時期なのだけど、この時期の記憶にある中での特別なたべものと言ったらやっぱり枝豆、そしてずんだのぼた餅。

ぼた餅って、じつはものすごく作るのが手間だ。たくさん作るのでなければやってられないくらい面倒。ハレのたべものなだけある。
昔、ばぁちゃん家に世話になっていた頃、夏に人が集まるときは必ずぼた餅を作っていた。あんこと、ずんだと、ごま、きなこ。くるみはたまに。一番好きだったのはもちろんずんだだった。

ぼた餅にありつけるまでは、じつに長い道のりだ。

縁側に、畔から抜いたばかりの枝豆が何株もあって、まず私に下る指令は枝豆を枝から外すこと。これがけっこう力がいる大仕事。たまに引きちぎるときに手を怪我することもある。これをまずひたすらがんばる。

そしたら、伯母さんが茹でてくれるので、茹で上がって粗熱が取れるのを待って、殻をむいて枝豆の豆を取り出す。このとき、一粒一粒豆の薄皮も取らなければならない。これをひたすらやる。

そのうち、すり鉢とすりこ木が登場して、総司令のばぁちゃんが登場。私はすり鉢の押さえ係。
ばぁちゃんが枝豆をすりつぶしながらずんだにしていく。最初のうちは豆が跳ねるので軽くとんとんと潰す。そのうちゴリゴリと回しだす。押さえる方も力がいる。
ばぁちゃんが砂糖を入れて加減する。少しとろみが出る。きれいなきれいな緑色のずんだ。いい塩梅になったら塩を少し足して、もう一回混ぜる。私も味見。すりこ木から人差し指にとって舐める。これが最高においしい。
ばぁちゃんがOKを出して、あんこの鍋の方の様子を見に行っている間に、こっそりもう一回舐めたりして。バレると怒られる。ぼた餅の分がなくなるだろって。

伯母さんが俵型のおにぎりみたいなのをたくさんこしらえて、私はラップを用意する。ラップにずんだを塗り拡げて、おにぎりをのせて、ずんだ餡をくるんでぎゅっとする。昔は素手でやっていたけど、餡が手にベタベタついて大変なのでいつからかラップになった。ラップなら私でも失敗しないでできる。これをなくなるまでひたすら繰り返す。

そんな遠い夏の日の思い出。夏のご馳走。

今日スーパーで枝豆を見つけて、なんとなく買ってみたのだけど、枝から外して茹でていると、広がる枝豆の香りに、そんなぼた餅のことを思い出した。

今の私は、枝豆茹でるだけでもう満足かな。ここからずんだにしてぼた餅にするのは、面倒すぎて無理だな。第一、ここからずんだにしたら、小さじ一杯くらいしかできない。

そういう貴重なものを手間を惜しまずに差し出すからご馳走なんだなぁとしみじみしながら、茹でた枝豆で、一杯。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?