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ひとりで泣きたい

昨日の夜は夫が夜勤でいなかったので、ひとりベッドに入った。
枕元に置いてあるリップとハンドクリームを塗りながら、
ふともういない母のことを想った。

そして、電気を消して目を閉じると
とてつもない悲しみに襲われた。

母がいなくなってから一度も思い出さない日はない。
だけど、昨日はとても感情的に思い出された。

涙が出てきたから、深呼吸をして気持ちを切り替えて寝ようと思ったけど
ダメだった。
私は起き上がって、声を出して泣いた。

母がいなくなってから、徐々に頻度は少なくなってきたものの
こんな感じになんの前触れもなく急に悲しみに襲われることはたまにある。

まるでダムが決壊したように、
ある程度の感情と涙を放出しないと収まらない。

そして数分間出し切ったら、また平常心に戻れる。

私は母を失ったとき、今まで生きてきた世界が終わったと感じた。
生まれてから今まで母のいない世界を生きたことはなかったから。

急にそんな世界に放り出されて、途方にくれてしまったけど
私には夫がいたのでなんとか乗り越えてきた。

いつまでも悲しみの中にいるわけにはいかない。
私には私の人生があり、生活があるから。

だから、母のことは毎日思い出しはするものの深く考えないように過ごしている。
だって泣こうと思えばいつだってわんわん泣ける。
でも、涙は出しすぎると癖になってしまうことを私は知っている。

だから毎日笑うし、ご飯もいっぱい食べる。
よく眠るし、ちゃんと幸せに生きている。

だけど、そうした生活の中でも少しずつ私の心のダムには悲しみが貯まっていって、急に決壊する。

もう大丈夫だと思っていても、その度に違うんだと気付かされる。

そして私は知ってしまった。

『いつまでも悲しみの中にいるわけにはいかない』

そうじゃなかった。

母のいない悲しみのその中に、新しい世界ができただけだったんだ。

だから、乗り越えることは ない。

記憶が続く限り、失った悲しみが消えることはない。
悲しみと上手に付き合いながら、普通に生きていくしかないんだ。


どうしようもなくなった時、私はひとりで泣きたい。
だって、慰められたくないから。

気を遣わせたくないし、
どんな言葉をかけられても、意味なんてない。
この悲しみはそういった種類のものだから。

ひとりでこっそり泣いて、またしれっと日常に戻っていく。

それで良い。







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