フォローしませんか?
シェア
松尾友雪〈Yusetsu Matsuo〉
2019年3月1日 00:04
春先は息が詰まる。日が長くなり、花々が目覚め、眠りは虚ろな囁きになる。雨は枝葉を伝い、言葉は指先から零れ、泳げた筈の道のりが途轍もなく長くなる。隣人が一晩中ドアをノックして、独り言を云っている、「御前の生涯は惨めだった」と。私達に幸福を思い描く事は出来ない、何故なら、それは思いがけないものであるからだ。花の目覚めの如く予測を越えた咲き方をして、気付く間もなく見過ごしてしまうだ