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”彼”の理想〜《オテロ》のビジュアル〜新国立中劇場デビュー秘話

新国立劇場中劇場デビュー

2020年、コロナ渦中で劇場閉鎖や外出控えが続いていたある日。

「新国立劇場中劇場での開催が再開し進みそうだ、チラシの内容を見直したい」

その時の”広報担当”からメールが飛び込んできた。
添付資料を見た途端に「わ、、、、わからん…何もわからん…」と、ぐるぐるし始めた自分の頭を、弱いなぁと苦笑してしまう。

感性型人間である私は、彼の言葉の洪水についていけない。奥様や同級生の方々には本気で大尊敬である。

その時受け取ったチラシ案は、
・オペラ好き
・ヴェルディ好き
・他のオペラ公演にも進んで出向く
・オペラの講習会にも参加する
・アーリドラーテ歌劇団公演を見たことがある
という5拍子揃った私が、仮に合唱出演歴がない客観目線があったと想定しても、どう反応したらよいのか…という具合だった。
※この時の案は非公開のままとなったので、配布はされていない。

メールで返信しようにも、電話で話そうにも「見た目」のことなので、伝わるか不安だった。
コロナ流行で外出を控えろと言われていた中、彼を呼び出し緊急ミーティングとなった。

公演品質との見た目ギャップ

「売りたい」はこっちの勝手で、「買いたい」と思っていただける要素を、視覚的に出す必要がある。

気になったのは、公演の品質とチラシの見た目のギャップだった。

それ以前は、半ばアマチュア楽団のような位置付けだったアーリドラーテ歌劇団だったが、《マクベス》公演後、たくさんのご好評を得ていて「すでにアマチュアを脱している領域」というお声もいただいていたようだ。

トップクラスの歌手を集め、バレエシーンにコンテンポラリーダンスを取り入れ、完全版に近い構成にし、照明や衣装にもこだわっていた。

私もひとりの合唱団員でありながら、これはもうただのアマチュアではない…と感じていた。
「チラシだけアマチュアのまま置いていかれているなぁ…」という印象があった。
この差をどう埋めよう…。

他では得られない価値、その伝え方

見てほしい人物像は誰なのだろう。聞けば「オペラを見たことがない若い女性に訴求したい」と言う。
では、演目がどういうものか、どれほどいいものか、イタリアの伝統が、ヴェルディが、とぎらぎらした言葉で書き込むより大切なことがあった。

見た瞬間、0.2秒くらいで即ぽちることを決められる見た目。
そして、12000円でもいいと思っていただける内容。
コロナによる劇場公演の危機にある中、リスクを乗り越えていただける要素がほしい。
《オテロ》を見たら、次回も絶対!と思ってもらえるようになろう。
他では見られない価値をお見せする約束をしよう。
こなれたプロではないがアマチュアにとどまるでもない、何か違う心意気…多くは山島氏の情熱が伝播していて、こだわった美的な舞台づくりを目指している雰囲気…が見えるようにしよう。

「チラシを見た時点で小さな感動を得られる」ということも目指したい。
…などなど。
けっこう深掘りして話し合ったと思う。

話をまとめて、演出の木澤氏が設定していたモチーフを使ったラフ案を出した。
この段階では私が作ると決まっていなかったが、彼が気に入ってくれて制作が進んでいった。

変更後のチラシは、主にこの団体やオペラをあまり知らない女性層に向けたいということで、やわらかい色彩を使い、バレエのイメージも加えた感じになった。

原作がシェイクスピアの『オセロー』のため、山島氏からは「白と黒」というリクエストがあったが、木澤氏からはピンクの百合というリクエストがあった。
黒という色は、広告に関してはかなり効果を狙わないと使うのが難しい。
そこで、黒をイメージできそうな夜空色(濃い青)と、対比的に白に近い色としてピンクとグレージュ系の渦にした。

タイトルも、イタリア語の「オテッロ」にこだわっていたが、通りと、見た目バランスのいい「オテロ」にした。

左:延期前に配布されたチラシ表 右:変更後のチラシ表
左:延期前に配布されたチラシ裏 右:変更後のチラシ裏

コロナ再燃の中、チケットは1000弱か強か、詳しいことは知らないのだが、あの状況にしては上出来だったとのこと。

中劇場の舞台を奥までつかいきるという、木澤譲氏の思い切った演出プラン「ワイドオープンオテロ」も話題になり、想像以上に盛り上がってくれた。

初日公演の後、一日中働いた疲れも見えずさっぱりした山島氏の表情に、私は安堵した。

第8回公演《オテロ》は好評裡に閉幕いたしました。 「ワイドオープンオテロ」をコンセプトとした本公演は、終演直後から大きな反響を呼び、両日公演とも、ご来場いただいたお客様から感動の声が続々と届いております。皆様方からのご声援により舞台を開催で...

Posted by アーリドラーテ歌劇団 on Monday, January 31, 2022

次回公演:新国立劇場中劇場 2025年7月5日(土)・6日(日)決定!
演目等の詳細が決まり次第、公式WebやSNS等でアナウンスさせていただきます。ぜひご予定ください。


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