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テクノロジーと旅の多様化・均一化

自転車で世界一周の旅に出てはや一年が経ちました。
自転車の旅は1日の中では意外と景色の移り変わりに乏しく、ぼーっと考え事をしながら移動していることも多いんです。
その日のご飯とかyoutubeの企画とか今後のルートのこととか…

最近の考え事のテーマはテクノロジーと自転車旅の変化です。せっかくの機会なので、ここら辺で一つ今の考えをまとめておこうと思います。

旅のデジタル化、特にスマホの登場は旅のあり方を良くも悪くも大きく変えたと思います。
スマホの恩恵として真っ先に脳裏をよぎるのは、旅行情報の検索が容易にできるようになったことです。
自転車での旅となると、私が高校生の頃は「ツーリングマップル」が最も充実した情報誌でした。当時はスマホも持っておらず、旅の情報は現地で仕入れるか、ツーリングマップルに頼るかのほぼ二択でした。しかし、現在では「地名・観光」で検索すればその地域の観光地がズラッと出てきます。「〇〇入国」と調べれば国境を越えるための情報から実際に超えた時のレポートまで様々な角度からの情報を事前に入手することが可能になりました。地図アプリをひらけば、その日の走行距離から、高低差まで寸分の狂いもなく表示してくれます。野宿やキャンプをする人のための情報共有アプリは世界規模で展開されています。「自転車での海外旅行」というニッチな分野ですら、少し調べれば情報がわんさか出てくる便利な時代になりました。
トラブルをなるべく避けて、見どころを取捨選択して、旅を満喫するためにはこの事前学習は欠かせません。

そしてスマホが旅のあり方を快適にしてくれるのは、何も情報検索だけではありません。
街中の看板やメニューにスマホカメラをかざせば自動で翻訳してくれます。少し難しい海外での会話も翻訳アプリを使えばなんとかコミュニケーションが取れるので、旅行先でのストレスはかなり軽減されます。
先進国ならお会計はタッチでピッ。
旅先で出会った旅人との交流も容易になり、次の旅先で会う約束もSNSを使えば何のそのです。パスポートを盗まれて絶望した時もスマホのおかげで何とかことなきを得ることができました。

しかし、便利になればなるほど、あれ?テクノロジーの力を使って、事前に学習したり困難を軽々乗り越えて、全てが予定通りいく旅行がしたくて旅に出たんだっけ??と自問自答しはじめてしまいます。

いつの間にか、検索で出てくる情報を見て、その情報と同じものを自転車の装備として選び、同じところに行き、同じものを見て、同じお店の食べ物を食べて、同じ場所に泊まっています。大袈裟に言えば、事前に調べてるものですから、そこに感動はなく、やるべきタスクをこなしているだけのようにすら思えてきてしまいます。これじゃあ誰かの旅をトレースしているだけなんじゃ、、、。
かなりネガティブに書きましたが、念の為、もちろん同じ体験をしているからと言って自分の体験が唯一無二であることは確信しています。いくらネットで検索しても、百聞は一見にしかず。実際の体験には敵いません。それでも、それでも、事前に情報を調べていなければ、もっと感動できたかもしれないのに、、、と思うことは多々あります。そんなことを繰り返していると、見知らぬ人に話しかけられては訳もわからぬままついていき、面白そうな看板を見かけてはふらっと寄り道し、自転車が故障すればぶつぶつ文句を言って、現地の見たこともない食材に舌鼓を打つ、そんな非日常のワクワク感を楽しむために旅に出たはず。そしてそのためにわざわざ自転車という道具を選んだんじゃなかったっけ??とそんな気持ちになってきます。
それでも悲しいかな、今日も見どころを検索し、より簡単そうな道を選択し、人の失敗談を読んでは事前に対策し、安全で楽しそうなみんなと同じ道を走ってしまいます。自分なりに旅の高揚感と安心感のバランスをとりながら、スマホとお付き合いしていきたい次第です。スマホもうまく活用すれば、旅の選択肢を広げ、より充実した旅のためのお供になってくれるはずですから。

そして、テクノロジーの進化が自転車旅に与える影響は、何もスマホだけに留まりません。
ここ数年で様々な自転車ジャンルが生まれ、既存の自転車ジャンルも発展してきました。旅との関連で特に目を引くのはグラベルロード、そしてE-bikeの登場でしょうか。E-bikeの原型が生まれたのは20年以上も昔ですが、今ではその性能も大幅に向上し、電動自転車を使って長期の旅行に出る人も増えてきました。バイクで旅行するのはペースが早すぎるけど、自転車で旅行するほど体力もない、そんな人達の第三の選択肢として今後E-bikeはより脚光を浴びることでしょう。(そして、そうなった時「電動の自転車で旅行するなんて邪道だ!」なんて平気で言う老害にはなりたくないものです笑笑)

そして、PCとインターネットの普及は世界中どこでも働ける社会を実現しました。現在自分が走行中のメキシコですらwifi環境がどの街でも整っていて、宿に泊まればどこでも快適にネットサーフィンを楽しめます。今後は、いわゆるノマドワーカーと呼ばれるような、インフルエンサーや会社員、個人事業主としてPCひとつで働きながら自転車旅行する人も増えてくることでしょう。私もyoutubeを使って、お小遣い稼ぎをしながら旅の資金の足しにしています。

https://www.youtube.com/channel/UCrp9FbYJpbg2On4TGnqx8IQ

そして近年の日本では、スマホと自転車があれば特別な技術がなくても、その場で働くことのできる、画期的な「配達員旅行者」も急増しました。自転車やバイクの旅人はこぞって配達バッグを片手に気に入った街々で食べ物を運ぶようになりました。昔ながらのシャケバイトやサトウキビバイト、リゾートバイトに加え、新たな選択肢はデジタル化によってどんどん増えていくことでしょう。

テクノロジーがいくら発展しようとも、自転車旅をやめようとは思いません。旅の選択肢がテクノロジーによって増えているのか、はたまた減っているのか、結局よくわかりませんが、少なくとも自分は選択肢が増えた状態で旅を楽しめるよう、上手にテクノロジーと付き合っていきたいです。

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