【実況する美術鑑賞#56】ジョルジュ・ド・ラ・トゥール「女占い師」【60分で1記事】
先日久しぶりに展覧会へ行ってきました。メトロポリタン美術館展。
国立新美術館で行われていたんですが、このメトロポリタン美術館というのは非常にオープンアーカイブが充実していて、パブリックドメインの画像が沢山使えるので、これまでも鑑賞プログラムでたくさん使ってきたサイトです。
今回は実際に展覧会へ行って、会場で気になった作品を何個か連続で取り上げて鑑賞していきたいと思います。
現地で多少を鑑賞したりとか、資料を少し見たりしたので、いつものように完全に初見という形ではないのですが、やってみたいと思います。
・5分の鑑賞で気づいたこと
これは結構有名な絵だと思います。「いかさま師」という作品で、真ん中にいる青年が、周りにいる人たちから、いろいろ持ってるものをくすねられているという、そういうシーンだったと思います。
一番右のおばあちゃんとやり取りをしてるんだけれども、他の人達は真ん中の男の人が持ってるものを色々パクろうとしてるわけですね。
有名な絵で、今回の展覧会のポスターとか、図録の表紙になってるんですけど、会場ではそんなに人だかりっていう感じじゃなくて、平日に行ったんですが割と近くで長いこと見れたのがすごい良かったです。
前から知っていたのと、会場でも惹きつけられた部分があったのと、意外に快適に現場で鑑賞できたので選びました。
実際に見て凄く印象的だったのは、カモになっている男の人の周りにいる人達の服がかなりきらびやか・・物理的に光っていたんですよね。キラキラと。
油絵具のテカリが照明にあたって光っているのか、そもそも金箔とか銀箔とか使ってあるのかちょっと分からないんですけど、このおばあさんの着ている細かい文様の服であったりとか、白い布をかぶった右から2番目の人の胸元の金の刺繍飾りであったりとか、左端にいる人たちの服ですね、そういうのがかなりキラキラ光っていて印象的でした。
真ん中の人から色んな高価な物をくすねるっていう主題だったと思うので、真ん中の人が一番お金持ってる=一番きらびやかかなっていう印象があったんですけど、実際見たらむしろ周りの人達の方がキラキラしてたなっていう・・そんな印象がありました。そこがちょっと意外でした。
後はこの真ん中の人の顔とか、その右隣の人の顔とかの肌の質感がすごい綺麗だったのと、それとは対照的に、近くで見ると黒い輪郭線、縁取りみたいなのが要所要所にあって、それが効果的に使われているのかなっていう感じがしました。
特に中央の男の人の腕とか手の周りとか、要所要所に黒い線が、縁取りと言うか枠線みたいな感じで入っていて、この腕のポーズって結構複雑っていうか・・・人が横一列に並んでいる構図なので、そんなに奥行きがない中で、この手のポーズって結構難しい形だと思うんですよ。特にこの左手が前に出てる所とか。
実際そんな立体的に描かれているわけではないとは思ったんですけど、この絵の中での立体的な手の動きを際立たせるために、そういう黒い線が要所要所に使われているんじゃないかなって、実際の絵では思ったりしました。そういうところが見所だったかなーって言う感じでしたね 。
・作家と作品
・再び5分の鑑賞で気づいたこと
タイトルを間違えて覚えてましたね。「いかさま師」じゃなくて「女占い師」というタイトルでした。
「いかさま師」っていうのは同じ作家さんの別の作品ですね。こちらもすごく有名で印象深い作品なので、勘違いしてしまったんだと思います。
ま、確かにこの絵でイカサマ師だと、何のイカサマなのかよく分からないですよね。説明を読んだらこの一番右にいるおばあさんが占い師で、手にコインを持ってるみたいなんですけど。そのコインで占う占いのことを今話していて、その隙に周りの人が金品を奪っているという・・そういう状況をみたいです。
ただ、このコインを近くで見るとちょっと曲がってると言うか・・なんかあんまり固そうなコインに見えなかったりするんですけど・・それはちょっと置いときましょう。
この男の人がカモにされているんですけど、その様子がおばあさんの服の柄になっている、鳥に捕まえられ用そうなウサギに被せられているとか、そういう話もありました。
あと、演劇的なものをモチーフにしたんじゃないかっていう話があって、だから舞台に立ってるみたいな、横並びっぽい構図なのかなーとか、あとフィクションがお題っていうところが、例えば、僕が間違った「いかさま師」っていう絵、こちらはカモになってる人が一番右にいる人だと思うんですけど、この「いかさま」って、ばれない可能性があると思うんですよね。
運が悪くてこのカードをに負けてしまったって思って、気づかないっていうのはあると思うんですけど、この「女占い師」の窃盗は、うまく盗んだとしても結構すぐバレちゃうんじゃないかなっていうふうにも思って・・
身につけてるものがなくなっちゃうわけだから、ポケットの中の物はまだいいとして、この首に下げてるメダルがなくなってたら、すぐ気付いちゃうんじゃないかなあとか・・だから、どうやってこの後それを周りの人達はごまかすのかなっていうのは少し気になりましたね。
またそこをうまくごまかす演技と言うか、テクニックがあるのか、もしくは意外に大胆なら気づかないものなのか、それともそういう事はこの絵の中では考えられていなくて、今の瞬間を舞台上の俳優さんたちのようにフィクションとして描くみたいな・・そういうことなのかなあなんて見ながら思いました 。
あと、この絵は上の部分がキャンバスが継ぎ足されていて、左の方は切り取られているっていう説明があったんですけど、確かにちょっと右の方が開いちゃってるのかなっていうのはそれを聞いて思いました。
右上のすごい目立つところにサインがあるんですけど、これも間を埋めるためのものなのかなあなんていう風に思って・・もう少し左の方に世界が続いているのであれば、このカモになってる人ももっと中心に来るだろうし、どうしてそういうふうになっちゃったんだろうかなっての説明を聞いて思ったところです 。
あなたにはどう見えましたか?
また次回!