yuka~yukaとバンド~

左手の小指を握られたあと。
yukaと駅まで帰りながら話をしました。

オレは「yukaと学校でもいいから話をしたい。」とyukaに相談。
yukaは快くOKの返事をもらえた。

yukaと遠回りしながらの帰り道。
yukaは自分の自転車から降りて、自転車を押しながらオレと話す。
直接駅に向かえば15分くらいの所を、2時間以上寄り道しながら
話していました。

yukaの自転車を見て気付いた。
「あ。オレがyukaを乗せて走ればいいのか。」
つまり、2人乗りですね。

yukaに、
「オレがチャリ漕ぐから、オマエが後ろに乗るか?」と言った。
yukaは、少し黙って考え込み、
「私が自転車の後ろに乗ると思い出す事があるから」と。
そんな思う事があるのか?とオレは、
「ただ後ろに乗るだけやん。大丈夫やろ?」と。

yukaはこう言いました。
「私が男の人の自転車に乗るのって、1人しかいなくて。
それが〇〇くんだったんよ・・・」と。

その名前はyukaが高校1年の時に付き合っていた、同級生の浩二の名前。
オレは少しイラッとして、
「それだったら、オレの自転車にも乗れよ!」と強く吐き捨てるように
言いました。

yukaはすぐさま、
「思い返すからやだ!」と。
この「乗れよ!」「やだ!」が2回ほどやりとりが続いて・・・。
オレは、
「浩二だけそんな事して、なんでオレだけは無理なんや・・・」と、
捻くれた言い方をyukaにしてしまった。

yukaは、
「じゃあ、逆に私の後ろに乗るのはいいよ!」と。
けど、不貞ててしまったオレは「もういいよ」と暗く沈んだ顔に。
そうすると、無理やりオレのカバンを引ったくって、
「さー!!乗るんだ乗るんだ!!」と、笑顔でyukaは言った。
オレも、ずっと不貞腐れているわけにはいかず、
「おし!分かった!」と、yukaの肩に手を掛けて自転車の後ろへ。

皆さんは御存知無いかも知れませんが、当時自転車の後ろに
荷台が無く、代わりに後部車輪の辺りに「立ちん棒」と呼ばれる棒が
付いてあって、後ろに乗るヤツは後ろに立って運転する人の肩を持って
乗るというのがあったんですね。

yukaが運転する自転車の後ろで、オレはyukaの肩に手を置いて走る。
華奢なyukaの肩は、とても頼りなさそうだったけれど、一生懸命に漕ぐ
yukaに、また特別な感情を抱きました。


文化祭が終わって。
今度はバンドの練習が忙しくなってきました。
2つ下、高1の女性ボーカルを新メンバーに迎えた。
(この事は、note「kimikoとの出会い」に書かれています。)

予定としては、冬休み前にライブをやって、冬休み中にもライブ。
どれもこれも20を超える対バンライブでした。

kimikoが加入した事で、地元のバンド仲間でもなかなか有名になり、
演奏順も後ろの方に回ってきた。

ギターとベース。そしてオレが同じクラスの建築科。
キーボードは同じ学校の美術科の同級生。名前は「hiroka」と言う。
そして2年後輩のkimikoが加入し、このメンバーで行こうと。

やるからには、今までと全く違うことをやろうと相談しました。

演奏時間は30分。MCを入れて5~6曲。
そしてライブによっては、2~3曲入れ替えて計8~9曲。
そしてkimikoの希望もあり「全曲洋楽カバー」でやることにしました。

ボーッと集まって、したい曲だけ弾いて叩いて悦に入り、
練習よりも、その後の夜遊びが重要だ!とか思ってたバンドが、
高校生活最後で、これほどまでにやる気が燃え上がるとは・・・。

毎日のように練習。
しかし、メンバーの多くが夕方以降までバイトを抱えていた。
練習開始は18時から21時まで。
オレは最終電車に乗り込んで夜の23時以降に家に帰る。
それからyukaと話をして1時に寝る。

今思えば、こんな無茶なことを毎日していたんだなぁと。
そして、夜遅くまでyukaは待って付き合ってくれたんだなと。
もう少し、感謝の気持ちを伝えていればと、今になって思いますね。

さて、このバンドの練習に際して問題が・・・。

あれだけ声量も太く、ハスキーな声を出す。
本当にジャニス・ジョプリンのようなkimikoのパフォーマンスでしたが、
実際会うと、とても大人しい性格のコで、練習の詰めの打ち合わせとか、
相談とかになると、意見を言ってくれないんですね。

「あぁ・・・はい。」とか「それでいいです・・・。」みたいな。
けど同性の「hiroka」とは、なんとか会話が出来るので成り立っていた
ようなものでした。

しかしいざ歌うとなると、これはもう・・・。圧巻でした。
狭いスタジオでは、両側の壁を背にギターとベースが並び、
オレは部屋の隅っこにドラムとともに鎮座。
その対面にkimikoとhirokaがいる。そちら側がスタジオの入口。
つまり、オレはkimikoを正面で見る。kimikoもオレを正面で見る。
というポジショニングだったんですね。

kimikoは全身を震わすような、それでいて演奏しているオレが心地良い
サウンドを響かせてくれる。その姿を眺めつつ、ドラムを叩く。
1つの演奏が終わると、すぐさまオレの顔を見てkimikoは俯き、赤い顔を
して、hirokoの所へ寄っていく。
ギターとベースとオレの3人が、演奏した曲をチェックして、リーダーの
拓也がみんなに指示を入れる。

しかし・・・。
曲間のkimikoのオレへの「態度」が、とても不思議に思えてました。

けど「2年下の先輩であるオレ達に、必死に合わせようとしている姿」に、
とても感動していましたね。

こうして、yukaとバンドとの生活が続き、そしてオレはその中で就職である
公務員試験の二次試験へと挑んでいくのです。

ゆうさん


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