yuka~就職の高ぶる感情~

公務員の2次試験を終え、後は最終合格を待つのみとなった。
yukaとは、放課後に1時間。帰宅して電話で1~2時間程度の会話が
毎日続いていました。

yukaは、某大手ゼネコンの就職が内定していて、クラスの女子生徒の中でも
かなり早い時期に就職が決まっていました。
その中で、クラスの女子リーダー的なヤツに、僻まれて文句を言われて、
大泣きに泣いた所を、yukaを好きになる前に見掛けていました。

11月も終盤になり、公務員試験の合格発表が。
2次試験まで通過したもの全てが合格となりました。

特に、地域消防本部の勧誘が熱心で、建築科=消防検査を今後は考慮して
是非とも就職して欲しいという声掛けがありました。

以前にも書きましたが、この当時の自分は本当に。本当に甘い考えを持って
いて、自身の就職の基準が「yuka」だったのです。

自分は電車で1時間以上掛かって通学するほど遠い距離。
yukaはその街に住んでいる。
もし、自分が消防職員になるのであれば、この距離差は大きいなと感じて
いたんですね。本当にあまちゃんな考えで、自分の今後の人生を量っていた
と思います。

いくつか合格した中での公務員で、今は無き郵政事業=郵政省の合格も
あった。しかし、就職先は高校を卒業してから決定になり、それもどこの県
に配属されるか分からないものでした。

しかしながらyuka基準で就職を考えていた自分は、この郵便を選んだ。
もしかすれば、赴任先がyukaと同じ街になる可能性があるから・・・。という
浅はかな考えからでした。

その他にも近畿圏の市役所が2つ。建築職種として合格していた。
学校としては、ここに就職したほうがいい。なぜ郵便を選ぶんだ???と
いう説得を、何回もされていた時期です。

自分の心も郵便とは決まっていたけれど、迷ってはいた。
この事をyukaに相談する事も躊躇していた。(もちろんなのですが。)

12月に入る前のとある日。

yukaと教室で話をしていた時の事。
この就職の話になりました。

「ゆうきは結局どこを選ぶん?」とyuka。
「郵便にしようと思ってるんやけどなぁ・・・」とオレ。
yukaは少し不思議そうな顔をして、
「え?なんで市役所行かへんの?そっちが絶対にいいやん!!」と笑顔で
オレに疑問と答えを突きつけてきました。

その時の感情・・・と言えば・・・。
「オレが遠くに行ってもいいのか!?」という・・・。 場当たり的な考え
しか思い浮かばず、その時も寂しさの中でyukaに対して怒りも覚えていた
程なんですね。

「市役所は・・・オレには合わん。なにせ全然勉強してなかったから。」と、
苦し紛れの返答をyukaにしました。
yukaは未だに不思議そうに、そして残念そうな顔をしながら、
「ふーん。そうなんやー。だったら(もったいない)けどなぁ・・・」と。

この会話。
何気ない会話の一コマなのですが、この会話で、今の自分の人生が決定した
と言ってもいいくらいの、重要な場面でしたね。

それからyukaは、郵便についての事をオレに2つ3つ質問した後に、
「どこに配属されるか分からないんやろ?」と。
そして、ここが大事なのですが、
「ゆきが遠くの山深い所へ行ったら面白いな!ハハハハハハ!!」と、
笑って答えたのです。

ガッツンと頭に響きましたが、そこではすんなりと、
「そうやなー。一人寂しい所で泣くかもしれんなー。」と、冗談を言って
答えていました。
しかし、当時そのショックとやらは大きいものでした。

その後、何事も無く2人は学校を離れ、オレは電車に乗り・・・。
yukaに自分が笑われた事へのショックが大きく、電車の中でどんどんと
失望感と、怒りがこみ上げてきたんですね。

突然オレは途中下車し、近くの公衆電話からyukaに連絡をしました。

yukaは、明るく元気な声で、
「え!?ゆうきもう帰ったの!?」と。
オレは。
「今日オレの就職の話で山深い所に行ったら・・・って言ったよな!?
オレが就職先を郵便にしたのは、オマエと少しでも距離が近い所で
就職したいからや!!それを、そんなに笑うなんて!!」と・・・。

言ったからには「それなりの覚悟」が無いと、もう遅い・・・。

yukaは、言葉にならずしどろもどろで「ごめんなさい」を何回も言い、
挙句の果てには、泣いてしまった。

物凄い虚脱感。だったのでしょう。
オレはそのまま泣いているyukaの声を聞きつつ受話器を落として、
駅のホームへと向かいました。

ゆうさん


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