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絶対の消息

絶対に忘れない。
初めて暮らした異国の街を後にする飛行機の中で自分につぶやいた言葉。
嘘だ。7年後には忘れていたよ。
いい加減に言い放たれた絶対の消息。

この部屋で過ごした時間を一生忘れない。
数年間の記憶を抱えて、いま本気でそう思っている。
絶対に。
そして数年後、きっと僕はまた嘘をつく。

だけど部屋は傷つかない。いずれ僕が忘れ去ってしまっても。
その頃にはきっと、僕の不在の時間が部屋の中に充満していて
薄っぺらな僕の絶対が入り込める隙間すら埋め尽くされている。

それでも部屋は覚えている。僕のいた時間を。
ここに存在していた絶対のことたちを頼りに。

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