Yusaku Aoki

note 2020年4月26日~ http://yusakuaoki.com

Yusaku Aoki

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最近の記事

宇宙カフェ

コーヒー豆を切らして緑茶を飲んでいると、タイミング良く父が豆を送ってくれた。 パッケージには何やら"宇宙カフェ"と書いてある。この豆のブレンド名らしい。 ちょうど昨夜観ていたアニメに宇宙の話が出てきたことを思い出した。 悪役がその能力を使って時間を無限大に加速させ続けて宇宙をその終わりまでもっていき、また始まりから世界を一巡させるという少々難解な話だった。 その悪役と最後まで生き残った脇役は繰り返された宇宙によって出現したパラレルワールドで最後の戦いに臨む。 宇宙カフェで淹

    • 絶対

      一生忘れない。 嘘だ。7年後には忘れていたぞ。 いい加減に言い放たれた絶対の消息。 この部屋で過ごした時間を一生忘れない。 いま本気でそう思っている。 絶対に。 そして数年後、きっと僕はまた嘘をつく。 だけど部屋は傷つかない。いずれ僕が忘れてしまったとしても。 その頃にはきっと、僕の不在の時間が部屋の中に充満していて 薄っぺらな僕の絶対が入り込める隙間すら埋め尽くされている。 それでも部屋は覚えている。僕のいた時間を。 ここに存在していた絶対のことたちを頼りに。

      • 149

         先週、久しぶりに飲むギネスビールを服にぶちまけてしまった。贔屓にしているYouTubeのチャンネルでもよそ見していたのだろう。 漂うギネスの匂いで、僕の意識は2013年に初めてロンドンに住んだ時のリビングへ戻っていた。兄や姉のように慕っていた同居人達の顔とたまに家の中に入ってくる黒猫、終わりもなく漂う時間と音楽が膨大な記憶達と静かに混ざり合っている。 その家はなぜか全員がギネスビールしか飲まない家で、リサイクルゴミの箱はほとんどギネスの缶で溢れていた。 記憶の中にいる僕は大

        • 金曜の夜

          金曜の夜のダンスフロアに半年以上もいない。信じられないくらい奇妙な気分だ。 名前すら知らない君。横でブリっているあなた。なんかもう呂律が回ってないけれど大丈夫? でも、みんな超楽しそうだね。なんでだかわからないんだけど、俺の身体はとても熱くて頭は妙に冷めているからフロアの全てが見えている。 君の動きと呼吸の仕方。あなたが踊りながらぶつかってくるときの温もり。レーザーが映し出す湯気はフロアにいる全員の感情を写し出したように揺らめいている。巨大な音圧で今にも台から落ちてきそうな

          甘い香り

          渋谷の酒場で小さなグラスに一杯目のビールを注ぎ込む。 一気にそれを流し込み、あなたと乾杯できる幸せを祝福!したと思った次の瞬間にはトイレの中に顔を突っ込んでいたりする。 ああ、なんてもったいない。 あなたの話も、あなたの表情も、後から来たあの子のこともよく覚えていないのだから。 担ぎ込まれたベッドの上で目を覚ました日は、いつも激しい自己嫌悪。 強烈な吐き気に圧倒された後、口内に広がる酸っぱい臭いで最低な気分だ。 寝心地が悪いと思った時は、決まってズボンのケツポケットに数本の撮

          甘い香り

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          パーフォレーション(コマの縁に開いている穴)のすぐそばに矢印がついていることに気付いた。今更。 見るコマによって矢印の向きはいつも違うんだけれども。 あっちに行ったりこっちに行ったり。興味深い。 時間にも向きがあるとして、それがどっちに向いた矢印なのかは僕には全くわからないけれど、 いつだって写真を見返しては3歩くらい下がってやっと1歩進む。 かつて、自分の人生にあったのかもしれないことをボンヤリ想いながら。 今ここに生きているって実感しか確かなことはないはずなのに、 過去

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          美しい人

          いい気分で酔いながら、小さなグラスへ再びビールを注ぎ足す。 その時、少しばかりの重みを瓶から感じることができたならとても嬉しい。 もう少しだけフワフワしていられるから。 今夜もまた写真を見返す。 そんな時は目の前の世界に薄い膜をかける。 写真は目の前の世界を正確に写し出しすぎてしまうので、少しばかりフワフワと視界がボケているくらいがちょうどいい。 かわいいなー。とか、かっこいいなー。って一般的に言われている人が、 1/500秒で切り取った世界だと実は大したことなかったりす

          美しい人

          サクサクふわふわ

          今日もまたシートを見返す。確かこれは2014年のベルリン。 ベルリンのケバブサンドは美味しい。表面がこんがりとプレートで焼いてあるから食べ終わる頃まで生地がサクサクしている。 なんとなく途中で食べ飽きてしまうロンドンのそれとはだいぶ違った。 飲んだ後は麺類一択だと信じていたけれど、これならありかもしれない。 そんな発見をしたのはいいが、トイレに入るのに1ユーロとられた。 どこにいるのかもよくわからず、とりあえず街を彷徨う。 おっさんが道で寝ている写真があった。横にはバカで

          サクサクふわふわ

          溶けたあと

          ある夜 金曜だったか土曜だったか。それとも平日だったか。 いつものようにどこかで誰かと会って何かを話し何かを飲んで食べ、 それらが血管中を彷徨い足元は既におぼつかない。 だが、気分はとてもいい。 もうすぐ1日が始まるから。 ロンドンの夜はいつだって肌寒い。 寝落ちしそうになる身体を外に押し出すと、急に目が醒める。 だが、醒めすぎたら台無しだ。遅くまで開いているコンビニに寄り、 店のオヤジの冗談に付き合いながら酒などを買い込む。 どこの店でもこの時間に決まって聞こえてくるや

          溶けたあと

          泡と幻

          遺された写真を整理しながら過ぎ去った瞬間を振り返ろうにも、 僕の記憶はいつも曖昧でその夜飲んだビールの泡とともに消え去っていく。 なんで笑っているのか。なんで泣いているのか。 僕はそこにいたはずなのに。何かを感じて写したはずなのに覚えていない。 変なの。すごくいい加減だ。 一ヶ月以上も外の世界から切り離されて生きていると、大量の写真に焼き付いたものすべてが幻のように思える。 それくらい世界は変わってしまった。嘘みたいに。 でも僕はそこにいて、君も確かにそこにいた。 笑ってる