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夏も暮れた煙

19時に渋谷のTSUTAYA前に集合。それまで3時間ほどある。

僕は以前友達と利用したカフェで暇を潰すことに決めていた。そこは居心地が良かった気がするからだ。本も持ってきている。渋谷はこれで三度目だ。


一度目は美味しいと噂のカツ丼屋さんを目当てに訪れた。

カウンターのみの座席にメニューはビールとカツ丼だけという拘りのお店だ。確かに美味しかった。1000円。「東京のカツ丼は分厚いぞ、関西は肉が薄い」東京に引っ越す前、頻繁に利用していたバーのマスターが江戸っ子で上京の際にご指導ご鞭撻をいただいたが今のところ分厚いカツ丼には出会っていない。


二度目は友達の希望でカフェ巡りとお酒を楽しんだ。

夜な夜な酒を浴びた。青い空気に朝日が差し込む世界とアスファルトを駆け巡るネズミのコントラストは甲本ヒロトならば美しいと表現するだろう。僕には無理だった。それ以来渋谷を嫌悪した。


「煙草は吸われますか」

雑居ビルがひしめく駅前を彷徨い目的のカフェを探し当てた。

「吸わないです」

「禁煙スペースは空いてなくて・・」

「大丈夫です」

適当に席に着き、ピスタチオラテを頼んだ。

店内は爆音で音楽が流れている。うぬ、イライラする。読書には適していない。どんな音楽だったか思い出せないがジャズやクラシックではなかった。友達と訪れた際は爆音の音楽に助けられていたのかもしれない。沈黙の時間が沈黙にならず苦にならないからだ。ただ一人で読書するときに爆音楽はダメだ。

隣のテーブルでは若い男が一人で煙草を吸いながらスマホを弄っている。副流煙は親しい人のものなら気にならないが他人の、しかも読書中に鼻腔を刺激するものはうざい。本当にうざい。

中高大と仲の良いメンバーには喫煙者がいた。しかし一緒にハマることは一度もなかった。理由は自分でもよくわからない。義務教育の賜物かもしれない。そういえばつい先日お酒の席で煙草を2、3本頂戴した。「ああ、なるほど。」あの煙草を人差し指中指で挟み、親指でトントンと灰を落とす感覚は胸が煌めく。最近すぐに満腹になるので酒の肴にも良いかもしれない。でもまあ自分で買うことは今のところない。お金も無いし。

少しすると隣の若者は席を立った。ラッキー。

数ページ読み進めると今度は二人組みの男がその席へやってきた。当然のように二人とも煙草を取り出す。おっと、最悪なことに一人は電子タバコである。電子タバコ独特の匂いとノーマル煙草(確かピース)の匂いが混ざってこちらにやってくる。うざい。

ピース野郎は何かいっぱい柄の入った眼鏡をしている。髪も金みたいな茶色に染めてるし年齢は明らかに30を超えている。白いシャツにジャケット、テェックのパンツにサンダル。ダメだ、僕にとって一番ダメなやつだ。しかもパソコンをカタカタして仕事?をしている。


嗚呼、一番最初の若者がずっといてくれればなあ。