思ひ出
夕暮れ蝉時雨
涙なんて、季節とともに無くなった
記憶もとっくに無くなった
なのに胸の中が蠢く
むせび泣く赤ん坊の声が遠くから聞こえる
思い出は写真のように、燃えたはずなのに
まだ、工場で働かされる機械のような
情動が、憧憬がそこにはあった。
季節風とともに、流れていった
あいつは風の又三郎
もしくは、台風13号
そして、気づけば胡蝶の夢みたく
非現実の彼方に現実だったものが
ひらりひらり
苦しまないで、八百万に祈り
名無しの権兵衛
轆轤首に轢かれ
誤解は誤解のまま
死に方も選べないのは当たり前
賛美歌みたいに、全ては意味をなくすのだ
2歳の子ども
一張羅にはまだ早いのに
気づけば旬を過ぎ、霊になる。
そこにあったはずのものもなくなっていた。
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