見出し画像

勝手にあぷりこっと賞~俳句~ 


旬杯の投稿句が出揃って今回も夏らしくたくさんの秀句で楽しませていただいています。どの句も甲乙つけがたくそれぞれの良さがあります。
私も「勝手に賞」を選んでみました。
賞の基準は一択。投句一覧にサラサラっと上から下まで目を通して、ハッと心惹かれた句、印象に残って好きだな~って感じた句をピックアップしました。独断ではありますが、だからこその「勝手に賞」
私の心に響いた秀句です。

今回、惹かれたポイントは、景色が浮かび、わかるな~きれいだな~、好きだな~って強烈な印象をもたらしてくれた句
心況とか自分と向き合うとか、そういう心模様が描かれて共感大な句です。

俳句でも短歌でも川柳も、鑑賞は読む側の気持ちや環境や状況によって形作られるように思います。同じ一覧の作品を読んでも昨年の自分と今の自分、明日や来年の自分が選ぶ句や選考のポイントは違うかもしれなくて、作品との出会いもこの瞬間の生ものなんだな~って感じました。

才能を買ひに行きたし蝸牛

これ、本当にそう思う!どこかに売ってたらどんなに遠くても行くよ。有り金みんな叩いちゃう。でも才能はお金では買えないこともよく分かっている。磨く努力をしなくちゃってこと。蝸牛、歩みは遅くても一歩は一歩。


牛飼いの声朗々と夏の原

夏の爽やかな草原、広々した緑の草の中に牛たちがいて、牛を呼ぶ声が朗々と響いている。雄大で涼やかな風を読むだけで感じます。高原の夏

新装のサリンジャー買う夏休み

サリンジャーって「ライ麦畑でつかまえて」のイメージしかなくて、昔読んだ気もするけれど内容も疎かだったりする。サリンジャーって響きが何となく良い。戻らないあの日、みたいな気がしなくもない。でも新装版が出ている。購入したのは今青春を送る現役の学生さん?久々に再会して再読してみようかって年代の方だろうか?洒落た感じで好き。
リンク開いて納得!この方の俳句、大好き。

生きる意味向き合う夏の高き空

生きる意味など考えなくても、知らなくても生きることはできる。何故生きてるのだろうなんて考えるから辛くなったりすることもある。でも、何故を求めるのも人間らしさなのかなって思ったりする。不器用だったり要領が悪くても、向き合って探し当てたものが拠り所になったりする。そんなことを考えさせられた一句。夏の空はどこまでも高くて簡単に答えは見つからなくても、問うこと、それ自体に意味があるのだと思う。

夕焼けにサティの調べついてきて

実はこの句も、サリンジャーと同じ。ろくに知らないくせに「サティの調べ」にクラッとした。夕焼けに「ジムノペディ」は似合い過ぎる。夏の夕暮れは哀愁を誘う。ゆったりした調べなのに何かに追われているような・・・

底までも昏き夜中のプールかな

この句も、景色が浮かんで背中がゾクゾクする。「昏き」が効いてる。ただ暗いんじゃなくて、底の底まで真っ暗でもしかしたら真夜中のプールは底なしで冥土まで繋がってるんじゃなかろうかみたいな妄想を駆り立てる。何気ない日常的な言葉や景色でも、組み合わせれば非日常感を演出できるんだな~って感じた。

ほっといた分だけ痛む夏蜜柑

これは、本当!その通り。夏みかんは鮮度がすぐに落ちるでもなくて冷蔵庫に保管しなくても、意外に食べられたりするんだけれど、忘れやすかったりする。夏蜜柑が傷んでるのを発見すると、何で早く食べなかったんだろうなんて後悔する。
人の心も同じ、身近にいる人っていつも近くにいるから何となくほっといたりすると、いつの間にか溝ができてしまっていたり。
丈夫なものにも気配りしなくちゃって思わされた一句

平凡に生き平凡に茄子を焼く

「生きる」ってことをシンプルに、そうだよね~って共感できる一句。日々できることを続ける。目の前のことに真摯に取り組む。自分にあるものを大事にする。平凡なことは、悪いことではない。日々の営みの大切なこと。地に足をつけて歩み続けることは素晴らしい。

清流の音どっときて夏の宿

ああ~旅行行きたい。静かな山の宿で、清流の音を聞いて癒やされたい。木々の匂いに包まれた露天風呂で安らぎたい。渓流沿いの宿で、水音を聞き窓からの風を受けてるかのように錯覚する。海も良いけれど夏はやっぱり森林浴。

煩悩の果てに吾あり青あらし

これも、自分を見つめる一句。煩悩は誰にでもあるけれど、自分に厳しい真面目な人ほど向き合いかたがハードだったりする。自分の中にあるいろいろなもの、目を背けたくなるようなものがあったとしても、まっすぐに見つめて乗り越えた先に自分らしさを見つけることができるのかもしれない。
生きるって辛いこともあるけれど、素敵なことだと思いたい。嵐はいつか過ぎ去る。気づけば、夏の風は人生の追い風になるかもしれない。
リンク貼ったら、作者はのんちゃさん。ホロスコープ同期生。共に頑張ったね、この夏。

校庭に屈む子ひとり蝸牛

この子はまだ、みんなと仲良く遊べないのかもしれないーそんな風にマイナスに捉えてしまいがちだけれど、それがこの子の個性なのかもしれない。
自分の殻に閉じこもるのは良くないよー本当にそうだろうか?今は自分の殻の中で自分の感性を育てている最中かもしれない。
どの子にもそれぞれの良さがあって、可能性をたくさん持っている。偏見を持たずに温かく見守ってあげたい。そんな風に感じた一句。

夜の底ふわり漂う海月かな

この句も光景がヤバい。神秘的な海の底、海の底はいつでも夜。光のない水の中でフワフワと漂っている海月。クラゲは海の月。微かな光を発しているのだろうか。自分が触れたことのない世界。想像とか幻想とか見えないものを思い描けるのも俳句の良さと思う。想像力を刺激された一句

以上12句。投句期間中から今まで、旬杯への投句の記事を読むのはできるだけ控えていました。リンクを開けて作者の方を確かめてみたら知っている方も多くて句には人柄が反映されるのかな、って感じました。
また、初めましての方もいてnoteの懐の深さも感じました。

決戦前に「勝手に賞」の投稿ができたこと。自分も少しずつ進歩してるのを感じます。
みん俳、しばらくお休みになるけれどまたいつか、このように一緒に楽しむ機会に恵まれますように・・・・