私と彼の物語 #1話
私と彼の始まりは、いつだったのだろうか。
私の先輩であり、いわゆるセフレであり、最愛の夫であり、パパになった彼。
私が今27だから、かれこれ付き合いは10年にわたる。
出会いはいたって普通だが、結ばれるにはフィクションのようなドラマっチックなことが沢山あった。それらを、忘れないうちに、10年が経つ前に書き記しておきたい。今は夫になったわけだから、最後はハッピーエンドで終わる。
それでもいいやって思った方は、ぜひ読んでみて欲しい。もうすぐ30歳になる女の、少しフィクションを入れた甘くて切ない青春のラヴストーリーを。
そう、あれは私が20歳、大学3回生になったばかりの春だった。
冬というのは寂しいものだが、一人で迎える春というのも寂しいものがあり、人恋しさを覚えるものである。誰かしらに連絡を取りたいと思うものだ。女よりも男性のほうが、なんとなく面白い。年齢は、先輩でも、後輩でも、同期でも、誰でもよかった。だから、私は複数人の男性にメッセージを送った。
”元気?”
”今なにしてるんですか?”
”ヤッホー”
”今度、久々に遊びませんか?”
こんなふうに気軽にメッセージを送るもんだから、私はとんでもなく遊び人だと思われるかもしれない。でも、ちっとも違うのだ。高校まで付き合ったことがあるのは1人だけだったし、キスだって彼氏としかしたことがない。20歳にでもいわゆる処女だったし、バーだってクラブだってダーツだって行ったことはなかった。男女のカラオケも飲み会すらも、距離感が近くて苦手だし。…私はなんの弁解をしているのだろう。
結論として言いたいのは、私は貞操を守り抜いた鉄壁の女子で。軽はずみなことはしない、至って真面目な。まだ幼き健気な少女だったのである。———ただ男性の友達が多かっただけで。
なんやかんやしていると、送ったメッセージに返信が来る。
”元気だよ”
”今日は実家に帰ってるよ、明日なら空いてるけど”
”ヤッホー”
”いいよ、遊ぼう。いつにしようか”
こうして見ているとわかると思うが、自分からメッセージを送った人(失礼)には、それ以上のメッセージを送ろうという気にはならないものである。なんと偉そうな私よ。まあ、暇だから返すし、遊びはするんだけど。
彼氏が欲しいんだけど、なんか違うんだよなあ、そう思いながら蹴上インクラインの桜を見に行ったりした。
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