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【不妊治療記録】”しない側”だった私たちvol.1


2.6組に1組は不妊という現実

 厚生労働省の2021年調査によれば、不妊を心配したことがある夫婦は39.2%、およそ2.6組に1組の割合。そして、不妊の検査したことのある夫婦は22.7%、およそ4.4組に1組の割合らしい。思っていたよりも多い。
 地方都市出身の私は、28〜29歳ごろから同級生の間での出産ラッシュで溢れかえり、インスタを開けば大きなお腹の友人を何人も見てきた。一緒に上京した友人はちらほら結婚をした人が出てきたくらいで、私は”妊娠はもっと先のこと”、”今は仕事を頑張りたい”と当時は思っていた。

結婚、そして海外転勤

 27歳の頃結婚し、その後私は海外転勤(単身赴任)を経験する。任期は3年と言われ、ずっと海外転勤を希望していたので、二つ返事で旅立った。この頃の私は「まだ子供とか考えなくていいや。3年後と言っても戻ってきたら30歳。まだまだ産める年齢だな。しかも毎年行ってる婦人科検診でも問題ないし、親族に不妊の人もいないし、なんとかなるでしょう」と普通に思っていたのだ。
 しかし、2.6組に1組が不妊に悩む時代。でもどこかで「私には関係ない話」と思い、そのまま3年間単身赴任でバリバリ仕事をしていた。

全ては計画通りでいたい私

 せっかく手に入れた海外転勤の話。もし海外転勤中に妊娠でもしたら人事にも迷惑をかけるし、任期前に戻されるかもしれないと思い、避妊はずっと続けていた。「子供は帰国して、結婚式をしてから」そう考えていたため、帰国後もまだ子供を考えていなかった。
 幼い頃から親の言うことを聞いてきた人生だった。親の望む大学、就職先を叶えてきた。全て計画通りに今まで生きてきた私。「結婚式が終わってから妊活」と思っていた。それでも母親は心配していて、「そんなすぐ妊娠しないんだから、ゆるっと妊活したらいいんじゃないの?」という感じだったけど、もし万が一妊娠したら選んだドレスも着れないし、体調が悪くて準備が滞るかもと思って聞く耳を持たなかった。

妊活で最初にやったこと

 まず妊活をするにあたり、予備知識のあった”風疹抗体検査”をすることにした。私たちの住む東京都では、妊娠を希望する夫婦で抗体検査を受けたことがないものは補助が出るとのことで、さっそく近所の産婦人科で抗体検査をした。
 私の世代は幼少期に風疹抗体を打っていない世代だったので、高校生の頃確かに1回打ったことがあった気がするのだが、再び抗体検査をすると、抗体なしであった。夫も抗体がなかったので、2人とも風疹の予防接種をすることにした。
 おじいさん先生からは「絶対2ヶ月は避妊するように」と念を押されていたが、結婚式を控えていたため妊活をする気もなかった。そして2ヶ月後、抗体がつき、結婚式も終わり、ようやく妊活スタートといったところである。

知らないことだらけだった妊活

 結婚式が終わり、妊活モードに。この時私31歳、夫35歳。妊活スタートといっても私の知識はほぼなく、基礎体温と言われるものも聞いたことはあるけれど測ったことなかったし、どのあたりが妊娠しやすいのかもよく分かっていなかった。避妊をやめれば、2~3ヶ月経てば妊娠するだろうと思っていた。
 最初の1ヶ月目は適当なタイミングを取り、当たり前だが生理が来た。2ヶ月目からいつ性交渉すれば妊娠しやすいかを調べ、「排卵日の2日前〜排卵日まで」という結論に至った。そして2ヶ月目からはタイミングを取ることにした。しかし、妊娠しなかった。
 そんなすぐ妊娠するわけないかと思いつつも、確率を上げる方法を模索していた。そこで「アプリの排卵予想は当たらない。自分で基礎体温を測ることが大事」ということを知る。基礎体温って何?と調べると、どうやら婦人用の基礎体温計と言うものがあり、毎朝起き上がる前に舌の裏に挟んで体温を測るらしい。そうと決めたら行動だけは早い私は、楽天でオムロンの婦人体温計を購入した。これはルナルナという生理管理アプリと連携できて、勝手にグラフ化してくれるので管理が楽だった。
 基礎体温を測ってるだけで、それをどう活かしていいのか分からなかったが、どうやら生理が終わってから排卵日までは体温が上がり(36.7以上)、排卵日が過ぎると体温が下がり、生理が来るらしい。いわゆる高温期と低温期の二層に基礎体温が分かれてるのが理想のようだ。
 今まで基礎体温を測ったことがない私は、自分の体がちゃんと機能しているのか、高温期と低温期がちゃんとあるのか、また排卵日はいつくらいなのかを知るために基礎体温を測ることにした。
 そして基礎体温をつけて、排卵日を予想して妊活をすること4ヶ月。全然妊娠しない。

”しない側”だった私たち

 最初の話に戻るが、2.6組に1組は不妊で悩んでいるのである。しかしこのデータを見ても「どうせ自分は大丈夫」と思ってしまっていた。でも4ヶ月妊娠せず、年齢も31歳。妊活は半年くらいかかると言われているから、まだそんな焦らなくてもという自分と、でもこのまま不妊だったら…と思う自分が戦っていた。生理が来る前はあんなにお腹が張ったり、一丁前に気持ち悪くなったりしたものだが、生理が来た途端ぴたりと止まるのだ。生理が来るたびに胸がキュッとなった。もしかして自分は妊娠できないのかもという不安がよぎる。自分には関係ない話と思っていた不妊も、私たちはしっかり妊娠”しない側”の人間だったという現実を突きつけられているようだった。
 そしてそんな時、夫に海外転勤の打診がきた。赴任時期は4ヶ月後。海外だと医療費も高いし、日本にいるうちにまずは産婦人科へ行こうと近所の産婦人科の門を叩くことにしたのであった。

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