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写真に対するスタンス表明
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#カメラマン

ひとつ先へと、踏み出すとき 〜出張撮影カメラマンのつれづれ〜

写真というのは、ジャンルの幅が広い。カメラを持っているから撮れる、これが撮れるならこれも撮れる、というものでもなく…それぞれに必要な知識も機材も、違ったりする訳で。 自分の仕事でいえば、七五三を撮れるからウェディングも撮れるというものでもなく。お宮参りが撮れるからといって、ニューボーンフォトも撮れまーす!とはならない。 必要な機材や小道具、気を配るポイントや求められるカットがそれぞれ違ってくるので。初めて仕事として依頼を受けてからの、この10年の中で。少しずつ経験を積み重

さぁ、おうちで写真を撮ろう

出張撮影というお仕事をしていると。ご自宅での撮影をお申し込みされる際に時々、申し訳なさそうに申告されることがある。 「賃貸で狭くて…」「散らかっていて…」「官舎で殺風景で…」 おうちが写真映えしない、と皆さんおっしゃられるのだ。しかし小さい子供さんがいると、しかも複数だったりすると…それはもう物が増えるのも片付けが追いつかないのも当然だ。犬しかいない我が家でさえ、犬が来てからはあっちにこっちにとお気に入りのおもちゃを持ち運ぶせいで雑然としてしまうのだ。さらに知恵と機動力の

見慣れない景色が見たい、そんな時は

いつものことを、いつもじゃなく、やる。 それは日常という見慣れた色彩に、異なる彩りを添える行為である… 単焦点レンズ、とは 単焦点レンズというのは、カメラに詳しくない人に向けて乱暴に一言でまとめてしまえば「ズームはきかないけれど、背景がしっかりぼかせるレンズ」のことだ。大抵のカメラ趣味の人間が、写真という沼にハマり始めた頃に一度は手を出すレンズである。 ズームがきかないということは。もう少しアップにしたいとか背景を入れたいとか思ったとしても、カメラではその操作ができない。

疑似宇宙の思い出

今回の写真展は「持って帰れる写真展」ということで、「どれを持って帰ろうか?」と真剣に写真を眺めて下さる方々が沢山いらっしゃった。その中である方に選んでいただいた1枚が、これだ。 写真を選んでいる最中に「これは何を撮ったものなんですか?」と尋ねられた。パッと見では判断しづらい写真に意識して仕上げているものなので、その疑問が嬉しかった。 イメージとしては"宇宙"、地表に開いた穴の向こうに宇宙が見える…そんな想像をしながら撮影したものだ。 実際は雨上がりの水たまりに映っている

万人受けは死んだ個性なのかもしれない

6/23-24と開催していた、初めての個展が無事に終了した。 「3~4時間程度あれば大丈夫だろう」と気軽に考えていた搬入が、ぶっ続けの10時間作業となり…終電を逃してタクシーで帰宅したり。展示後の写真の数に圧倒されて「これは数の暴力では…?」と不安になってみたりと、予想外のことも色々あったけれど。 多くの方にご来場いただけたこと。これだけの数なのに、じっくり目を通していただけたこと。持って帰る写真を選ぶのに真剣に悩んでいただけたこと。数多くの差し入れを頂いてしまったこと。

へたくそな写真から見えてくるもの

今週末には初めての作品展が始まる。 ここしばらくはその準備にかかりきりでずっとバタバタしていたし、今もまだわりとそうだ。レポートは当日の朝に完成するタイプの学生だった、と言えばこの直前での焦りが伝わるだろうか。 先週いっぱいまでは、どの写真をプリントに回すかでギリギリまで悩んでいた。何年前まで遡るかを悩んだけれど、結局は出張撮影を始めた最初の写真から展示しようと決めた。そのせいで作業が増えた。Lightroom導入前のものについては、再現像をすることにしたからだ。 その選

¥300

記憶の小径、愛の行方(仮題)

今年は夏前に、生まれて初めての作品展的なものをやろうと思っている。 これまで写真サークルでの、ゆるい雰囲気のグループ展はやったことがあったけれど…個展というの初めてだ。というか、個展というほどに大げさなものではない。「壁にL判プリントをペタペタと貼り付けて、ご自身や家族の写っているものは自由に持って帰っていただける」という、これまで撮影いただいたお客様たちに楽しんでいただけるような展示をメインにやりたいと考えている。 そこに加えて、「これまで趣味で撮ってきた風景の写真も展

撮影のお手伝いをした時の話

そういえばもう随分前になるけれど、広告撮影をするカメラマンさんのお手伝いをしたことがある。 とはいっても撮影に纏わる部分では無くて、使いっ走り的なアシスタントだ。商業施設のチラシ制作の為の撮影だったから、各店舗から商品や料理を借りて返して…をしながら横目でチラチラと撮影を見ていた。 顧客や撮影対象が違うと、撮影スタイルも全く違うもので。まず持ち込みの機材がすごい。三脚は10本くらいあるし、光源は最大5灯、ディフューザーも数種類準備してあった。その他にもレフ板やテープ、バッ

写真の話、イルミネーションと子供

昨年は何度か"ひろしまドリミネーション"と呼ばれる、平和大通りで行われているイルミネーションでの撮影機会があった。 しかし実はイルミネーションと人、どちらも綺麗に撮るのはなかなか難しい。 写真を撮らない人は「目ではこれだけ見えているんだから、撮るのもできるのでは?」と考えるようだけれども、そんなことは全くない。人間の目は超高性能!高機能!機械であるカメラとは比べものにならないくらいにハイスペックだということを知って欲しい。「見たままに撮る」というのは、実はわりと難しいこと

わたしが見た、あなたの世界は

出張撮影、というのは。 誰かの人生のある瞬間だけ、ひょいっとお邪魔させていただくお仕事だ。 だから自分の子供もいないというのに。卒園式やら入学式の参列経験があったり、七五三のご祈祷を体験したりしている。 他にも結婚前の両家の顔合わせに立ち会ってドキドキしたり… 運動会では子供を追って校庭中を必死で走り回ったり… お宮参りに同行して、赤ん坊の小さな手にきゅーんとしたり…   こうやって人生の節目…それも幸福成分を多く含むような場に、部外者ながらひょっこり顔を出している

作業としての撮影は…

友人や身内の、式場でのウエディング前撮りに付き合ったことが何度かある。 自分の撮影ではない、他人の撮影を見られるということに。 ちょっぴりワクワクしたものだけれど… あれ、思ってたよりずっと"作業"だった。 仕事の効率を求めるなら、相手と向き合うことは必要ない。 条件さえ揃えば、そこにいるのが誰だろうと同じ。 人に合わせて型を作るのではなく、人を型にはめていく。 そう感じさせられるような…まさに仕事としての撮影だった。 1日に何組も流れ作業のように撮影していくのであ

シンデレラの魔法を見たくて ~ビフォア&アフター写真~

たまにイベントなんかで、ヘアメイクさんと一緒に組んで撮影することがあるんだけれど…そういう時に「かわいいは作れる」って、本当かもなぁって思う。 髪型、服装、メイク、小物、そして撮り方… 1つ1つはちょっとした違いでも、積み重ねていくと印象ってグッと変わる。 例えば…こちらは遺影の準備も兼ねたメモリアルフォトの撮影を、ということで来られた女性。娘さんが勧めてくださったそうで「最近は60代ぐらいからこういった写真を撮っておくそうなので…」とのことだったのだけれど。 このイベ

写真のあなたが見せる顔

人の撮影をしていて面白いな、と思う事の1つが。 ちょっとしたことで、ガラッと変化が起こる事かもしれない。 同じ相手を撮っているのに、印象がくるくると変わるのが面白い。 例えば、着るもの。 ジャケットの色が違うだけで、イメージも変わる。 柔らかなベージュのジャケットは、キリッとした黒よりも 女性らしい華やかさが強調される。 それから髪型もだ。 イベントなどで、ヘアメイクが入るとその効果がよくわかる。 ふんわりかわいらしく、と軽く巻いた髪型と控えめなメイクに… ロッ

写真には日常を、幸福を

これは人物写真、特にご家族での撮影に限った話なんだけれども。 "幸福の気配のある写真"を撮るのが好きだ。 それはおそらく家族写真というものが、"見返す"ことを前提にして撮るものだからだと思う。 例えば5年後10年後に撮った写真を見返した時。 その情景が物凄く幸せそうに見えたとしたら… 実際その時は結構大変だったり、しんどい思いが続いてたりしていても。 「あの時はあれはあれで、幸福だったのかもしれないな」 って思えるんじゃないかなって。 人間には、思い出補正という優しさ