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講談:なんだかんだ熊之丞《和歌を詠む》

一席お付き合いを願います。恋ばなが大好きな古典の先生、男子はその先生を親しみを込めてエロ典と呼んでおりました。
エロ典が和歌を詠むという夏休みの課題を出したのですが、まともに詠めるわけはありません。パクってもいいが恋の歌というのが条件です。パクるにしても数多くの和歌に触れないとできません、それがエロ典の狙いだったのでしょう。
さて、せっかく恋の歌を詠むのだから、恋文にしようと思い立った者がおりました。
『朝夕に顔に出にけりわが思い 人知れずとは思わぬものを』(君への思いは四六時中顔に出ちゃってるけど、いいんだ知られまいなんて思ってないんだから)
切り貼りの和歌をしたため、課題を見せ合うかのごとく思いを寄せる君に渡しました。そして待つこと一週間、彼女の返歌もどこか覚えのある和歌でした。 
『われを思う人を思えぬ悲しみは われ思う人との別れなりけり』(あなたを思えないのは好きな人と別れるぐらいの悲しみなんです)
なんて優しい断りかたでしょうか、ますます好きになってしまいます。懲りずに渡す恋文にも、必ず歌が返ってきます。
こうなりますと、この先は想像に難くないところですが、それはまた別のお話ということでこれにて失礼いたします。

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