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講談:なんだかんだ熊之丞《開いた玉手箱(10年目の同窓会)》  先の《玉手箱の葉書》というお話では、中学卒業の時に『いつまでも忘れません』との葉書が届き、その葉書が玉手箱の中に納まるまでを語りましたが、今回はその後日談となります。

中学を卒業して10年、同窓会をやろうという者がどの学校にも必ずいるものです。地元を遠く離れて久しく、実家にも滅多に帰りません。それが同窓会に出席する気になったのは、玉手箱に納めたあの葉書が思い浮かんだせいでもありましょう。
やがて同窓会の当日がやって参りました。同級生という変わらない温もり、そして変われない煩わしさ、そんな独特の雰囲気に包まれながら、彼女”達”をさがします。残念なことに出席は1人でしたが、意中の子だったので、さっそく近づいて輪の中に入ります。
「中学のことなんて、いつまでも覚えてられないよ」
「そういえば寄せ書きしたよね。《会わなくても一生友達だ》とか《いつまでも忘れません》とか、あの恥ずかしい寄せ書きどこいった?」
キーワードを混ぜながら彼女の様子をうかがいますが、とんと手応えがありません。
違ったかな、無かったことになってるのかな、そんなことを思い巡らすうちに、会はお開きとなりました。二次会へ行くグループを見送りながら、ひとりでぼんやりしていると
「忘れてないわよ」
突然の声に驚き振り向くと、そこには彼女の姿がありました。
さて、25才にもなると、ここでどうするかは人生をも左右するのでしょうが、それはまた別のお話ということで、きょうはこれにて失礼をいたします。

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