"壁のような山地"は本当に壁だった【都道府県シリーズ第2周:岐阜県 山県市編no.4】
都道府県ごとに地形・地質を見ていく「都道府県シリーズ」の2周目。
今回は岐阜県山県市です。
山県市南部の谷中分水界の成因を探るため、周辺地域を広く見渡したところ、山地や谷地形、河川等が一定の方向に発達していることが分かりました。
特に幅の広い谷地形は山県市の谷中分水界と同様な方向性を示しており、何らかの関係性が疑われます。
※前回記事はコチラ👇
壁のようなチャート山地のナゾ
山県市南部を北東端とする幅約10km、長さ約40kmの地域は、幅の広い谷や平坦地、標高300m程度の山地が混ざり合うような地形を示します。
図の赤点線や黄色点線のように、西北西ー東南東方向の山地と谷地形が交互に並んでいます。
しかし主要河川は山地を貫くような方向(南北~北東ー南西)に流れており、濃尾平野に入る手前には地域全体に蓋をするように、まるで壁のように山地が連なっています。
そしてこの山地は、硬いチャートでできた山でした。
地質図で地質構造を"読む"方法
この地域の地質図をもう1度見てみましょう。
図のようにチャート(オレンジ色)が西北西ー東南東方向に細長く分布している様子が分かります。
しかし何故チャートはこのように細長い分布になっているのでしょうか?
その秘密は「地質構造」にありそうです。
地質分布を詳しく見るために「5万分の1地質図幅」を見ましょう。
チャートのオレンジ、砂岩の黄色以外にも、青や水色などの地質も記載されています。
これらも同様に西北西ー東南東方向に伸びています。
ところで、チャートや砂岩は堆積岩ですよね。
堆積岩とは、様々な粒子が堆積して固結して岩石になったものです。
特にチャートや砂岩など水中に堆積したものは、水平方向に広がる傾向にあります(※例外もあります)。
例えば、ある地域では標高300m以上にチャートが分布しているとします。
その場合、地質図では標高300m以上の山地が広くオレンジ色に着色されることになりますよね。
しかし堆積岩はいつまでも水平方向に広がっているとは限りません。
長い年月の間に変形し、斜めになったり垂直になったりと変化します。
このような"地質構造"の違いは、地質図を見ることで概ね把握できます。
では実際に、どのような地質構造が地質図ではどのように見えるのか?
下の図を見てみましょう。
円錐形の山を想像しましょう。
円錐の底面が標高200m、途中の点線が300m、頂点が400mだとします。
オレンジ色がチャート。白はその他の地質です。
①~③それぞれの場合で、以下のように見えることになります。
文章にしましたが、図を見れば一目瞭然かと思います。
実際の地形や地質構造はもっと複雑なので難しいですが、慣れれば地質図を見ただけで「概ねの地質構造」は推定できるようになります。
地質図と断面図で確認
では、これまで見てきた地域の地質構造がどうなっているのか?
もう1度地質図を見てみましょう。
厳密には、この地域の地質は褶曲(しゅうきょく)しているので良く見ると実は複雑で、部分的にV字だったりしますが、そこは目を瞑りましょう。
大局的には、青点線で囲った範囲がこの地域の地質構造を示しており、チャート(オレンジ色)は西北西ー東南東方向にほぼ真っすぐ伸びています。
(※褶曲については今後の「日曜地質学」でお話しします)
赤点線で囲った範囲はさらに分かりやすいのではないでしょうか?
黄色の中に細長い水色がいくつも描かれており、これらも西北西ー東南東方向にほぼ真っすぐ伸びています。
そうです。
この地域の地質は、西北西ー東南東方向に伸びるほぼ垂直の地質構造なのです。
なおこの地質図には、黒点線方向の断面図も描かれています。
やはり、ほぼ垂直でした。
このように、チャートがほぼ垂直に分布していれば、確かに「壁」ですよね。
この壁のようなチャートの山地が谷中分水界とどう関係するのか?
次回へ続きます。
お読みいただき、ありがとうございました。
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